日々是総合政策No.210

民主主義のソーシャルデザイン「若者がもっと気軽に意見を出せる社会に!」

 3月4日に千葉県知事選挙、3月7日に千葉市長選挙が告示され、3月21日の投開票日に向けて論戦が繰り広げられる予定です。今回、これまで千葉市長を3期12年務めてきた熊谷俊人氏が千葉県知事選挙に立候補するために、千葉市長を辞職することにより、県知事選挙と政令市の市長選挙が同時に行われる「ちばダブル選挙」となりました。
 私は、これまでも投票率の向上や若者の政治参画を進めるため、「ちばでも」という活動に取り組んできました。「ちばでも」というのは、「千葉」の「デモクラシー(民主主義)」の略なのですが、これは「千葉」だけではなく、全国に広げていきたいと思っています。先日、広島県内の学生さんから連絡があり、「ちばでも」のノウハウをお伝えいたしました。「ひろしまでも」が根付いてくれたらと思っています。
 ちばダブル選挙を前に、私が所属している学部の1年生で動画づくりに興味を持っている学生さんに協力してもらい、投票啓発の動画を制作しました。

 3月4日には、千葉市長選挙立候補予定者に参加いただき、WEBでの公開討論会を開催する予定です。Zoomを活用した公開討論会は、あまり前例が無いのではないかと思います。(是非、千葉市以外の方もご視聴ください)。特に、若者の質問、意見、政策提案を募集し、事前に立候補予定者にお渡しする予定です。また討論の論点に反映させる予定です。
 なぜ、私が若者の政治参画の取り組みを続けているのか。その答えは、自分たちの「価値」や「感性」を大切にして、自分自身の幸せのことを選択し、その幸せを得るための行動をしてもらいたいからです。例えば、自分たちが住んでいる街について、自分たちにとって、もっと住みやすい、楽しい街とはどのような街なのか。もっと自分たちの視点、価値、感性から意見を出し、自分たちができることを取り組んでみることで、本当に、自分たちにとって良い街になる可能性があると思います。
 大人たちは、「若者は政治に関心が無い」、「若者の投票率が低い」と言います。しかし、それは大人たちにも責任があると思います。若者がもっと気軽に意見を出せる環境があらゆる政策形成の場に必要だと思います。

注1:「民主主義のソーシャルデザイン」プロジェクトでは、「ちばでも」を始め、若者の政治参画・社会参画に関する研究を実践活動を通じて進めています。ご興味ある方は、ぜひご連絡ください。
注2:千葉市長選挙立候補予定者WEB公開討論会は、こちらから。

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.205

なぜ大学は対面授業に踏み切れないか:私論

 文部科学省は2020年10月中旬に対面授業が半数未満の大学名を公表するとし、努力が足りないと批判しました。以下は、対面授業の難しさについての私の個人的見解です。
 私の娘の通う小学校では1学年2クラス編成、1クラス30人弱で、social distancingにはギリギリです。また給食もあり、5人以上での会食自粛に反する環境です。幸いなことに、今のところ小学校ではクラスターが発生していません。
 コロナ禍やクラスター発生の条件に関して、大学は、小中高とはどこが違うのでしょうか。
 第1は、通学方法、通学時間や通学距離の違いです。平均的な通学距離は、小中高大と進むにしたがって延びます。大学への通学時間が1時間以上の人も結構います。通学には電車・バス・モノレールなどを利用する大学生が多く、複数回乗り換えることも普通です。朝夕はラッシュ時間と重なって3密状態です。つまり、大学生は、自宅と大学との往復過程で相当の感染リスクに直面しています。
 第2の違いは、規模や人数です。娘の小学校は6学年合計で400人程度です。やや大きな高校では生徒総数が1000~2000人ほどでしょうが、そのようなマンモス高校の校舎は結構広いでしょう。
 しかし、大規模大学では、1学部1学年の学生数が1000人以上のところも少なくありません。生徒総数1000人規模の平均的な高校と大規模大学の1学部1学年の規模がほぼ同じとすれば、1学部には生徒総数1000人規模の高校が4校分入り、学部数が5つあれば高校20校相当の人数が大学に集まっているという計算になります。しかも、各学部の大学生は、そうした高校の校舎よりもかなり狭い空間(高層でも横には狭い)で授業を受けます。
 大学生は、小中高校生と違って毎日朝から午後まで授業を受けることがないので、分散しているものの、最も学生数が集中する時間帯には高校10校分以上の学生数が集まる可能性があります。これは、学内にいることで相当の感染リスクに直面することを意味します。それに加えて、サークル活動やスポーツ活動があると、時間と場所を問わず、至る所で3密空間が発生します。 
 このように考えると、対面授業の全面的かつ早期の実施は、大学生を高い確率で感染リスクにさらす危険かつ無責任な方策としか思えませんが、皆さんはこれについてどのように考えますか。

(執筆:谷口洋志)

日々是総合政策No.203

本能寺の変の「謎」

 いよいよ最終回まで数回となった2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」。明智光秀(十兵衛)の主君であった斎藤道三は、命を散らすことになる長良川の戦いに向かう前、十兵衛に、「信長とならば、お主やれるかもしれん。大きな国を作るのじゃ」と言い残し、出陣しました。
 時を経て、十兵衛と信長は、将軍足利義昭を奉じ、京に上洛を果たし、「大きな国」を作ります。その後、将軍足利義昭を京から追放した後、織田信長政権は最盛期を迎えます。ここまでが信長と十兵衛にとって、「大きな国」の創業期であると言えます。
 その後、信長は家督を嫡男の信忠に譲ります。これを現代的に表現すれば、企業経営者が自分の子どもに「社長」職を譲り、自分は「会長」になったと言えるでしょう。
 いま、株式会社織田家には、信長社長時代から会社を支えてきた重役たち、信長の息子たち、次世代の社員たち、大きくは3つのグループが存在するようになりました。
 ここで、信長は人事異動や配置転換を始めます。重役の柴田勝家常務を北陸支社長、羽柴秀吉常務を中国支社長、滝川一益常務を関東支社長に任命し、本社から遠ざけてしまいます。まだ支社長に任ぜられた重役たちは良かったのですが、解任された重役たちもいました。これらの重役に代わり、信長の息子たちが本社の重役となっていきます。ただし、経営戦略担当常務である十兵衛だけは本社に残りました。
 このとき、信長は、「息子たちのために、いま役員の世代交代と組織変更をしておかなければならない」と考えたのかもしれません。信長から離反する社員たちも出てきて、信長は、ますます疑心暗鬼になり、暴走し、信長を取り巻く人々の心も離れていきます。その中には、「次は自分が制裁を受ける番だ」という恐怖もあったかもしれません。十兵衛は、信長を諫め続けますが、信長にはその声は届きません。「信長の暴走を止めるのは、大きな国を一緒に作ってきた自分しかいない」と思ったのかどうかはわかりませんが、十兵衛はある決意をします。「ときは今 あめが下しる 五月かな」。
 本能寺の変を現代的に見れば、「事業承継」を失敗した結果と見ることができます。後継者問題や事業承継は、経営のリスクと言えます。秀吉も事業承継に失敗をしています。歴史から現代の経営者が得る教訓は多いのではないでしょうか。

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.197

変化対応と闘争

 2020年は、これまで「当たり前」であったことを続けることが難しくなり、私たちの世界を大きく変えることになった1年であったと言えます。その変化は、言うまでも無く、新型コロナウイルスによってもたらされたものでした。
 多くの職場で「在宅勤務」の導入が進んだように思います。在宅勤務や営業活動のリモート化が促進されることは、オフィスを置く地域や住環境の選択にも影響を及ぼします。会議や営業活動がリモートでできるのであれば、都心にオフィスを置く必要はないかもしれません。また、大きなオフィスを置く必要もないかもしれません。これは経営の観点から言えば、コスト効率化に大きく寄与する可能性があります。
 もし、毎日、通勤をしなくて良いのであれば、郊外の広い家に住むという選択もしやすくなります。自然に囲まれた環境や自分の趣味に取り組みやすい環境に住みながら、ワークライフバランスを実現しながら働くことの方が、もしかすると生産性は高まるかもしれません。
 人々の生活や行動の変容は、すなわち消費者のニーズも変化します。企業にとって大切なことは、こうした消費者のニーズの変化を適切に捉え、自らのサービスモデルを変革させていく、すなわち、変化に対応することです。これが経営の本質です。
 変化に対応すると言っても、全く新しいことを始める、ということではありません。企業には、これまで積み重ねてきた顧客からの信頼、すなわち「ブランド」があるはずです。そのブランドの提供方法を柔軟に変化させていくことで、新たなサービスを創造していくことが重要です。
 環境の変化に対応できる者は生き残り、対応できない者は生き残れない。世界は無常であり、自然淘汰と進化が常に繰り返されてきました。2021年は、企業やサービスモデルの生存競争がより一層激しくなると思います。
 こうした移行過程にあって、制度や組織は、人工的な変化が必要とされます。その時に生じるのは、「古き者」と「新しき者」との間の価値と利害対立です。社会変容の移行にあって、「既得権」との闘争のプロセスが必然とされることは歴史的に見ても明らかです。変化対応とそれに伴う闘争、これが2021年の大きなテーマとなることでしょう。

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.189

ユーザー視点の行政デジタル革命

 いま、皆さんの身近な社会やコミュニティで、皆さん自身が何らかの政策づくりに関わることになったと思います。その時、皆さんは、どのような視点で政策を考えますか。この問いに対して、「自分が良いと思う政策を考える」と答える方もいらっしゃるかもしれません。または、「みんなが良いと思う政策を考える」と答える方もいらっしゃるかもしれません。答えは、どれも正しいと思いますが、皆さんの中で「ユーザー(利用者)の視点で考える」と思った方はいらっしゃいますか。
 例えば、このようなことを考えてみてください。いま、あなたは「住民票」が必要になったとします。そこで、市役所の窓口に行きました。そこには、案内係の人がいて、番号札を渡してくれて、申請書の書き方を親切に教えてくれました。ただ、番号札を見てみると、自分の前に10人ほど待っていることもわかりました。
 このとき、皆さんはどのように思うでしょうか。5分待っても呼び出されず、10分待っても、まだ自分の前に、あと数人。「今日は、この後、用事があるのに」、「もっと早く手続きが済めばいいのに」。このとき、ユーザー視点で考えれば、皆さんが最も求めるサービスは、早く住民票を発行してもらうこと、すなわち「時間」だったかもしれません。
 ユーザー視点で考えれば、行政サービスの提供において、「時間」はとても重要な要素だと思います。利用者満足度の観点から「どれだけ時間がかかったか」ということ、時間というコストをかけてしまったかということに、もっと注目していくべきだと思います。
 そこで必要なことは何か。これが行政のデジタル化(DX:デジタルトランスフォーメーション)です。AI、IoT等のデジタル技術を導入し、業務の効率化や業務改善を進めることは、住民が負担する「時間」というコストを軽減することにつながります。
 「脱ハンコ」は、行政のデジタル化の大きな象徴だと思います。しかし、行政のデジタル化は印鑑を無くすことではありません。行政サービスの利便性を高め、住民が支払った時間のコストを戻すことなのです。「行政のデジタル革命を政策ユーザーの視点で」。この視点が欠かせません。

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.185

菅政権のアベノミクスが目指すもの

 「瑞穂の国の資本主義」。この言葉は、安倍晋三前首相が、政権奪還後に出版した『新しい国へ‐美しい国へ 完全版』(文春新書)で触れられる一節です。「自立自助を基本とし、不幸にして誰かが病で倒れれば、村の人たちみんなでこれを助ける。これが日本古来の社会保障であり、日本人のDNAに組み込まれている」と述べ、瑞穂の国にふさわしい資本主義、市場主義の形、経済のあり方を考えていきたいと読者に語りかけています。
 第2次安倍政権発足後、ただちにデフレ脱却を目指し、アベノミクスと呼ばれる経済再生の政策を実行していきます。しかし、そのアベノミクスも2015年には、「一億総活躍社会」という新しい看板を掲げて、変容をしていきます。また、安倍政権では、「政労使」という枠組みを通じて、賃上げに政府が「慎みを持った関与」を行ったこともありました。本来、賃金は労使交渉を通じて、民間で決めることです。ここに政府が関与することは、異例であると言えるでしょう。これは「成長と分配の好循環」を創り出すためのアプローチと、単に片付けられない安倍前首相の「政策観」や「国家観」があったのではないかと推測します。
 安倍前首相が、祖父である岸信介元首相をつなぐもの。これは「憲法改正」だけではなく、実は、社会保障や労働・雇用の政策でも、2つの政権はつながります。
 岸政権では、国民年金法を制定するとともに、国民健康法を改正することで、国民皆保険制度を創設しました。また「最低賃金法」を制定したのも岸政権でした。安倍政権では、全世代型社会保障改革に取り組み、最低賃金の引き上げに取り組んできました。安倍政権のアベノミクスは、成長と分配の2つの側面を併せ持ち、政府が市場経済に積極的に関与していくことを「是」とする「瑞穂の国の経済政策」であったと言えるかもしれません。
 菅義偉首相は、所信表明演説において、自身の社会像を「自助、共助、公助、そして絆」であると述べました。規制改革と社会のデジタル化を政権の一丁目一番地とする政権の姿は、新自由主義的なアプローチの側面が色濃く描かれるようにも思います。
菅政権のアベノミクスは、引き続き、「瑞穂の国」を目指すものなのか、小泉政権時代の「新自由主義」的な政府像を目指していくのか、目が離せません。

引用文献
安倍晋三(2013)『新しい国へ‐美しい国へ 完全版』、文春新書

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.176

菅政権の「改革」のエンジンは?

 「人生には、3つの坂がある。上り坂、下り坂、そして「まさか」という坂だ」。これは、小泉純一郎元首相の言葉だったと思います。
 憲政史上最長の通算在職日数、そして連続在職日数を更新した安倍晋三前首相が、その記録を達成した週末に退任を表明し、9月16日に、長期政権の幕を閉じることになりました。
「まさか」、新型コロナウイルス感染症という新たな感染症が発生するとは。「まさか」、東京オリンピック・パラリンピックが1年程度の延期になるとは。2020年は、「まさか」「まさか」の連続となりました。
 元々、安倍首相の意中の後継者と擬されていたのは、岸田文雄前政調会長でした。岸田氏にとっては、「まさか」の総裁選の構図となりました。石破茂氏にとっては、地方票で存在感を見せることが、今回の総裁選のミッションであったはずです。「永田町の論理では「菅氏」だが、党員の声は「石破氏」」という構図を作り、来年の総裁選につなげる戦略ですが、石破氏にとっても「まさか」の票数となり、「ポスト菅」を狙う戦略を見直さざるを得ません。
 安倍前首相の退陣表明後、内閣支持率が上昇したことも興味深い現象です。安倍前首相は66歳。体調が回復すれば、まだまだ政権を担当することができる年齢です。ポスト菅は、「まさか」の安倍前首相の「再登板」(という可能性もゼロではありません)。
 菅義偉首相は、経済政策の重心を、規制改革やデジタル化の推進といったミクロ経済政策に移行させていくようです。身近なところであれば、携帯電話の料金の値下げなども進められる見通しです。こうした政権の主要政策について、省庁横断的な推進役となるのは河野太郎行革・規制改革担当相です。河野大臣には、小泉改革時の竹中平蔵氏のような役割を期待されるのではないかと思います。
 ポスト菅の候補たちが、「まさか」の坂にある中、河野大臣にとっては、「ポスト菅」の最終試験が課されたとも言えるかもしれません。中曽根康弘元首相も、首相に就任する直前のポストは、鈴木善幸内閣の看板政策であった「行革」を担当する「行政管理庁長官」でした。
 課題は、改革のエンジンとなる機能をどのように設定するかです。小泉改革では経済財政諮問会議がその役割を担いました。菅改革のエンジンは「どこ」になるのか。これが改革の成否を占う最初の見極めどころです。

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.168

新型コロナウイルス感染症対策への提言ノート(2) 

 今年に入り、新型コロナウイルス感染症のことを初めて耳にしたときに思い出したことは、2007年に、米国フロリダ州オーランドで行われた”Business Preparedness for Pandemic Influenza”という国際会議のことでした。この国際会議は、ミネソタ大学のCenter for Infectious Diseace Research and Policy(cidrap)が主催した会議で、新型インフルエンザの脅威に対して、どのように「備えるべきか」という論点について、基調講演が行われたり、有識者が意見を交わしたりするというものでした。私自身は、日本から参加した一聴衆でしたが、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)を経験した次なるパンデミックにどのような準備をするべきかという世界の経験を直に学ぶ貴重な時間となりました。
 この会議に出席し、また今般の新型コロナウイルス感染症の流行で再認識したのは、「公衆衛生政策」は国家政策の基本であるということです。総合政策論や公共政策論の中で、公衆衛生に関する保健政策の分野にもっと注目をすべきであると感じました。大袈裟な言い方かもしれませんが、公衆衛生政策を国家や自治体の政策の基本として考えるべきではないかと痛感しました。それだけ、私たちの世界は新たなウイルスの脅威には「脆い」と言えるのではないでしょうか。また公衆衛生政策を実施する上では、施政者に時に強い権限を付託する必要があります。この点で、有権者と為政者との間での「社会契約」は重要な意味を持ちます。
 ここで私が強く疑問を感じたのは、7月の東京都知事選挙でした。あのタイミングで都知事選挙を行うことは”必然”であったのでしょうか。
 2011年の統一地方選挙では、東北地方での地方選挙は延期され、岩手県知事選挙は、東日本大震災から6か月後の9月11日が投票日となりました。これは特例法によって選挙の延期を可能にしたのです。
 ということであれば、今回の都知事選挙も少なくとも半年間は延期ができたのではないかと思うのです。選挙を延期し、都知事には、新型コロナウイルス感染症対策に集中していただく、そして感染症の状況が落ち着いた後、選挙を実施すれば、有権者は選挙を通じて、感染症対策の結果も含めて現職知事を評価し、判断ができたのではないかと思います。しかし現実は、7月に選挙が行われたことで、結果が見えない中で、新たな任期の「チケット」を現職知事に与えることになりました。次の評価の機会は4年後です。ここに私自身は幾ばくかの疑問があるのです。

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.158

新型コロナウイルス感染症対策への提言ノート(1) 

 7月の4連休初日に、新型コロナウイルス感染症の東京都における新規患者報告数は300件を超え、366件となりました。この4連休は、元々は、東京2020五輪大会の開会式(7月24日)とその前日を休日(海の日)とした「オリンピック連休」でした。東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まり、その後、政府は「Go To トラベルキャンペーン」を、この連休に合わせて実施することになりましたが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、「Go To トラベルキャンペーン」は、東京都を除く形で始まりました。しかし、この連休の局面は、不要不急の外出の自粛、都道府県をまたぐ移動の自粛を要請が必要となる状況に転じました。

出所:東京都『都内の最新感染動向』に基づき、筆者作成

 上のグラフは、東京都が公表する都内の感染状況(新規患者に関する報告件数)について、1月24日以降、7月23日現在までの毎日の新規患者報告数と累計数をまとめたものです。
 3月の3連休以降の最初の「山」に続き、6月下旬から第二の「山」となっていることは明らかです。この「山」は、最初の「山」よりも高い山になるかもしれません。
私だったら、このタイミングで、この連休中に緊急事態宣言を発出すると思います。医療体制を維持しなければなりませんし、新型コロナウイルス感染症以外の患者さんにとっての医療体制も守る必要があります。
 いま、国や自治体は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、感染症対策に取り組んでいます。新型インフルエンザ等対策特別措置法や政府の行動計画において、今回、「想定外」であったことは、ワクチンや抗新型コロナウイルス治療薬が存在しないということです。そのため、新型インフルエンザ等対策特別措置法ではなく、新たに新型コロナウイルス感染症対策特別措置法を立法化し、今般の感染症の特徴に応じた対策や行動計画を新たに定める必要があると考えています。
 また、東京都は1兆円近くあった貯金(財政調整基金)のほとんどを、今般のコロナ対策に使い、残額が807億円となるなど、いわば財政的にも「体力勝負」の様相です。財政に対するケアも必要です。
 そもそも、コロナ禍の中で、東京都知事選挙を任期満了に伴い実施したことは、正しかったのでしょうか。
 このコラムを通じて、これらの論点について考えていきたいと思います。

(注1)東京都『都内の最新感染動向』「新規患者に関する報告件数の推移」(2020年7月23日現在)
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
(注2)東京都『都財政に関する有識者との意見交換会』「資料1 都財政の状況(事務局資料)」(アクセス日:2020年7月23日)
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/02tozaisei.pdf

(執筆:矢尾板俊平)

日々是総合政策No.152

コロナ後の世界 (3) 「リモートワーク」が変えること

 私たちは、新型コロナウイルス感染症のワクチンや治療薬が開発され、そのワクチンや治療薬が十分な供給体制が構築されるまでは、新型コロナウイルスを意識し、感染のリスクを常に想定しながら、社会経済活動の在り方を組み立てていくしかありません。
 政府による緊急事態宣言の発出後、在宅での「リモートワーク」を導入した職場が増えました。「リモートワーク」は、新型コロナウイルスのリスクを想定する生活においては、益々、普及を目指していくべき取り組みでしょう。そのためには、零細・中小企業でのICT投資の拡大が必要となります。また、個々の家庭のICT環境の整備も欠かせません。この点は、政府の経済対策としても重点的に取り組むべき項目と言えます。
 これまでの日本社会では「ハンコ」が重要な役割を果たしてきました。契約時、社内での決裁時など、印鑑を必要とする書類が多くあります。ICT技術を活用した「リモートワーク」になると、回覧される書類も契約書類も紙ではなく、電子ファイルになることも多くなるため、「ハンコ」を押すということも少なくなるかもしれません。これは日本文化の大きな変容と言えるかもしれません。
 「リモートワーク」の普及は、「就業規則」を見直す機会になるかもしれません。今後、新型コロナウイルス感染症の再流行等により学校の休校、幼稚園や保育園が休園となったとします。核家族で共働きの世帯では、やはり子どもたちの対応をすることは難しくなります。そこで、曜日ごとに、「今日は父親が子どもの対応をする日なので、昼間に仕事をするのではなく、母親の仕事が終わる夕方以降に、仕事をすることができる」、「今日は母親が子どもの対応をする日なので、父親の仕事が終わる夕方以降に、仕事をすることができる」というような家庭内分担を可能にすることが必要です。
 このような裁量的労働時間設定を、「就業規則」や「雇用契約」で認めことで、柔軟に就業時間を設定することができるようになれば、「ワークライフバランス」の推進も大きく前進することでしょう。そして、このことは、「移動」という概念からの解放に加え、「固定的な就業時間」という概念からも解放されることを意味し、実は、地方創生を大きく推進することにも貢献します。

(執筆:矢尾板俊平)