日々是総合政策No.236

スウェーデンのSKVの活動(3)

 今回はSKV(課税庁)の徴税業務について、日本と比較しながら解説します。
 まず、SKVは日本の国税庁と異なり、国税だけでなく地方税の徴収も行います。国の勤労所得税・資産所得税・消費税・法人税のみならず、地方勤労所得税も徴収します。2019年の地方勤労所得税の税収は、税額控除前基準で、国の勤労所得税収の約13倍を占めます(注1より算出)。
 次に、SKVは社会保険料も徴収します。たとえば、年金保険料の雇い主拠出分と本人拠出分を集めます。他方、日本では健康保険料や年金保険料は日本年金機構が (注2より)、国民健康保険料は各市町村が徴収します。
 以上をまとめると、SKVは国税・地方税・社会保険料からなる公的負担を一体的に徴収する機関と言えます。
 ここで、スウェーデンが全納税者に申告納税を義務づけている点に注目すべきです。いま、企業に雇われている勤労者を例にとりましょう。スウェーデンも日本も、毎月、企業が各勤労者の給与等に対する税を納付します。いわゆる源泉徴収制度です。ただ、日本の場合は年末調整-源泉課税分の過不足分の調整-によって、大部分の勤労者の勤労所得税の納税は終了します。たとえば、給与収入2000万円以下の勤労者は申告不要です。しかし、スウェーデンの勤労者は全員申告を求められます。
 同国の申告は以下のようになされます(注3より抽出)。SKVが納税申告書を納税者宛てに送付しますが、その申告書にはあらかじめ、各税額-国と地方の勤労所得税、利子・配当などの資産所得税、社会保険料の額-が記されています。SKVは既に、企業・金融機関等から送付された支払調書により税額を算出しているわけです。当然、納税者である勤労者にも支払調書が送られています。勤労者はこれをもとに申告書の記載税額をチェックし、異論がなければサインを記し、申告終了です。異論のある部分については添付資料を添え修正します。
 以上のプロセスで、納税者は自己の公的負担額を幅広く認識できます。筆者は、この点にこそ同国の申告納税の意義があると考えますが、皆さんはどう思いますか?


1.SKV URL
https://www.skatteverket.se/omoss/varverksamhet/statistikochhistorik/skattpaarbete/oversiktomskattpaarbete.4.5c1163881590be297b5dcdd.html
2.日本年金機構 URL
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/nofu.html
3.馬場義久『スウェーデンの租税政策』早大出版会、252-254頁。

(執筆:馬場義久)

日々是総合政策No.228

スウェーデンのSKVの活動(2)

 今回は注1に基づき、SKV(課税庁)によるIDカード(日本のマイナンバーカードに該当)の交付を取りあげます。スウェーデンでの実際の生活では、IDカードによってPIN(マイナンバーに該当)の確認が為されます。
 たとえば、銀行口座や証券口座の開設、クレジットカードでの取引、保険取引、賃貸住宅の契約、運転免許証の申請、新聞購読、レンタカーの使用、医療の受診、処方箋による薬の購入など、日常生活の多くの場面でIDカードの提示が求められます。また、IDカードは、民間や公共部門が提供しているe-サービスを利用するためのe-認定(認定とサイン)機能をも持ちます。
 IDカードを申込む際にもSKVに出向きます。申込み資格は、13歳以上で原則住民登録をした人(日本は0歳から-注2より)です。SKVに、本人証明書(パスポートや運転免許証等)を持参し申込みます。その際、身長の測定と顔写真の撮影をなされます。成人では身長があまり変化しないからでしょう。なお、18歳未満の申込者は申込みについて保護者の許可を、さらに申込みに際し保護者1名の付添いを求められます。またIDカードの発行は有料で400クローナ(最近のレート、1クローナ=約13円で5200円)かかります。マイナンバーカード(以下、マイカードと表記)は無料です。高福祉国家は「がっちり」しています。
 申込みが認定されると、SKVから登録した住所にその旨を知らせる通知が送られ、申込み者はその通知をSKVに持参しIDカードを受取ります。IDカードの有効期間は5年(日本は20歳以上が10年、20歳未満は5年-注2より)です。
 IDカードとマイカードの共通点は、顔写真・氏名・生年月日・性別・有効期限がカードの表に表示されている点です。異なるのは、①IDカードでは写真が大小三つ、マイカードでは写真が一つ表示②PINはIDカードの表に、マイナンバーはマイカードの裏面に表示、③IDカードのみに身長・氏名のサインが表示④IDカードに住所表示がなく、マイカードには表に住所が表示され、⑤マイカードのみに、表に臓器提供意思の署名欄がある点です。
 筆者は概ねIDカードの方が厳格に作成されていると思いますが、皆さんの感想はいかがですか?


1.SKV URL
https://www.skatteverket.se/download/18.1927c51b15e7ee438722ae9/1561977558450/identitetskort-for-folkbokforda-i-sverige-skv720-utgava06.pdf
2.総務省URL
https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/03.html
最終アクセスはともに2021年7月5日。

(執筆:馬場 義久)

日々是総合政策No.224

スウェーデンのSKVの活動(1)

 スウェーデンのSkatteverket(課税庁、以下SKVと記す)の活動を紹介します(注1)。SKVは、日本における国税庁と税務署を併せたような公的組織で、徴税が業務の基本です。しかし、その業務は日本の国税庁より広範囲に及びます。
 まずSKVは、住民登録業務の責任を負っています。住民は転居や子どもが生まれた場合には、市役所ではなくSKVに届け出なければなりません。
 重要なのはSKVが、住民登録の際に納税者番号、すなわち、個人番号(Personal Identity Nummmer:以下PINと記す)を決め交付することです。新生児は誕生時、移民は移住時の住民登録の際に決定されます。日本のマイナンバーと同様に12桁の数字ですが、PINは乱数字を活用しつつ生年月日(8桁)を組み込み、かつ、性別がただちに判明するよう工夫されています(注2)。この措置は税制・年金・医療などの実務を円滑にし、年齢別・男女別データの作成を容易にすることでしょう。ちなみに、同国の統計では男女別比較がきわめて重視されます。
 さらにSKVは、住民登録で得た情報-本人氏名・住所・生年月日・生誕地・家族の氏名など-とPINを、他の公共機関に自動的に配布する権利を持ちます。配布先公共機関は、①社会保険庁 ②移民局、③国家地図・地籍局、④交通局(運転免許証関連も含む)⑤年金局⑥コンミューン(市町村に該当)⑦ランスティング(都道府県に該当)などです。
 特に、⑥や⑦には情報が毎週送られます。この点、スウェーデンが地方分権の国であることに注意しましょう。コミューンは介護・福祉・教育を、ランスティングは医療を担い、両者とも、その主要財源である地方勤労所得税の税率決定権を持っています (注3)。
 筆者も、ストックフォルムに2年滞在したおり住民登録をしました。驚いたことに、その数日後、妻宛てに「乳がん検診をするように」との案内が届きました。SKVが担っている納税者番号制度は、徴税のみならず、社会保障の迅速な実施のためにも使用されているのです。

(注)
1.本稿は、馬場義久[2021]『スウェーデンの租税政策』早大出版部、243-247頁の要点を平易に解説したものである。
2.なお、性転換するとPINを変更しなければなりません。
3.つまり、ランスティングとコミューンの関係は、公共支出の役割分担に基づく「水平的関係」と言えます。

(執筆:馬場 義久)

日々是総合政策No.218

社会保険料の負担(終)

 今回は介護保険における現役の保険料と給付の関係を解説します(以下,注1より)。介護保険の被保険者は65歳以上の第1号と、40歳から64歳の第2号からなります。現役階層は殆ど第2号に属します。
 被保険者が要介護等と認定されると、原則として介護費用の1割の利用者負担(自己負担)で介護サービスを享受できます。そこで、介護費用マイナス利用者負担を給付費とよびます。その財源構成は、
 給付費100%=介護保険料50%+公費50%
 です。公費は税投入部分であり国税と地方税が使用されます。そして、保険料による50%分の財源は,2018年度から2020年度については
 保険料による50%分=第1号の保険料で23%分+第2号の保険料で27%分、つまり、23:27という比率で負担を配分します。この比率は65歳以上と40歳から64歳までの人口比です。よって、被保険者一人あたりの平均保険料は第1号と第2号とでほぼ等しくなります。
 重要なのは、第1号は要介護等の原因を問わず介護保険から給付が与えられるが、第2号は、末期がんなど加齢による特定の病気を原因とする介護等のみに給付がなされる点です。

図 介護保険受給者数(千人)2019年
*2019年3月審査分より。
(出所)注2に基づき筆者作成。

 図は介護保険によるサービスの受給者数を年齢階層別に示します。第2号の受給者は約12万人ですが、その総人口4200万人(注1より)に対する比率は0.3%に過ぎません。さらに図における受給者全体の517万人の2.3%に過ぎません。逆に言えば、全受給者の97.7%が第1号被保険者です。
 結局、第2号の保険料はその殆どが第1号の介護サービスに使用されます。この意味では、第2号の保険料は保険というより、第1号の被保険者への支援(=所得移転)を行う目的税にかなり近いものになっています。
 本コラムNo.216で見たように、健康保険も一部高齢者への支援金として使われています。しかし、介護保険の第2号保険料の方が支援金としての性格がより濃厚です。現役の要介護確率が疾病確率より著しく低いからです。
 第2号の保険料のあり方についても議論を深める必要があるでしょう。

(注)
注1.厚生労働省 URL
https://www.mhlw.go.jp/content/0000213177.pdf
注2.内閣府URL
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450049&tstat=000001123535&cycle=1&year=20200&month=11010303&tclass1=000001123536&tclass2=000001128816&stat_infid=000031958948&tclass3val=0
最終アクセス 2021年4月17日。

(執筆:馬場 義久)

日々是総合政策No.216

社会保険料の負担(4)

 今回は健康保険を取りあげ、現役の保険料と給付の関係を解説します。日本の健康保険制度は、現役用と高齢者用に分かれます。現役用として、大企業の被用者が加入する健康保険組合や、中小企業の被用者が加入する「協会けんぽ」などがあります。自営業者などは国民健康保険に加入しますが、74歳までの前期高齢者の多くを含みます。
 高齢者用の代表例は、75歳以上の個人が加入する後期高齢者医療制度です。その財源構成を説明します。
 医療費マイナス本人の自己負担を給付費とよび、それを100とします。後期高齢者医療制度では、給付費の10%を本人の保険料、約50%を公費(税)、残り約40%を現役世代からの支援金で調達します。つまり、加入者は保険料の10倍の保険給付を得る一方、その給付財源の40%を現役が負担します。
 実際、2018年度では、
 給付費15.1兆円=保険料1.2兆円+公費7.9兆円+支援金6兆円
 となっています(注1より算出)。 .
 次に現役の健康保険組合を例に、その保険料の使い道を見てみましょう。2018年度における日本全体の健康保険組合の合計値で、
 保険料総額8.2兆円=現役の給付費4兆円+後期高齢者支援金1.9兆円
          +前期高齢者納付金1.5兆円+その他
 となります(注2)。なお、前期高齢者納付金は、65歳から74歳の前期高齢者比率が、全保険制度の平均値より高い国民健康保険への「支援金」です。
 結局、健康保険組合の保険料のうち、3.4兆円(=1.9+1.5)は高齢世代の給付に使われます。つまり現役からの所得移転です。
 確かに、今の現役が高齢期になれば、その時点での現役から所得移転を受取りますが、高齢化や生産年齢人口の減少がまだ続きますので、今の現役が払った高齢世代への所得移転額>今の現役が高齢期に受取る所得移転額、となります。
 つまり、今の現役の生涯期間全体を視野に入れても、一期前の世代への所得移転が残存します。この点、本コラムNo.212で紹介した、人口高齢化に直面する賦課方式の老齢年金制度と同じです。

(注)
1.国立社会保障・人口問題研究所URL
http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h30/fsss_h30.asp
集計表2
2.健康保険組合連合URL
https://www.kenporen.com/include/press/2019/201909091.pdf
最終アクセス 2021年3月18日。

(執筆:馬場義久)

日々是総合政策No.212

社会保険料の負担(3)

 社会保険料は支払者に社会保障給付を与えます。そこで今回は、日本が採用している賦課方式の年金制度が、保険料負担に見合った年金を給付できる条件について解説します。
 まず、保険料負担に見合った年金を定義します。
 それは、現役期(第1期)に納めた個人の保険料Hの元利合計が、当該個人の高齢期(第2期)に年金Gとして給付される場合です。この時、GとHの関係は
  G=H(1+r) (1)
 となります(注)。rは現役期間における貯蓄の利子率です。給付を考慮した保険料の純負担をα1とすると、
  α1=保険料負担-年金=H(1+r)-G=0 (2)
 が成立します。式(2)は第2期での値なので、保険料負担にHだけでなく利子分rHが含まれます。つまり、仮に第1期にHを市場で運用したら得られる利子を含めなければなりません。
次に、賦課方式を見ます。現役世代の人口をLY ,一人当り保険料をH、高齢世代の人口をLO、一人当り年金をGとし、かつ、LY=LO(1+n) とします。nは人口変化率(100n%)で小数です。
 賦課方式は、現役の保険料をその時点での高齢世代の年金に使用するので、
  LY×H=LO×G  
 が成立します。GとHとの関係は
  G=H×LY/LO=H×LO(1+n)/LO=H(1+n) (3)
 となります。いま、n>0とし、しかも各世代が同額のH0を支払うと仮定しましょう(H=H0)。この場合、高齢世代の年金総額は、一世代若い現役世代の人口×H0(=保険料総額)です。これを高齢世代の人口で割ったのがGです。n>0 の時、高齢世代の人口の方が少ないので、G>H0となります。
 さて(3)から、保険料の純負担α2は
  α2=H(1+r)-G=H(1+r)-H(1+n)=H(r-n) (4)
 となります。いま、高齢化をふまえnが低くn<rとします。この時、α2>0なので、保険料負担の一部が年金として戻ってきません。よってα2は「税」と同じです。しかも、それは低いnに直面する世代ほど多額になります。
 この「税」は、一期前の世代(高齢世代)が年金として得ています。つまり、「税」は、ある世代からその一期前の世代への所得移転に他なりません。
 賦課方式では年金がnによって決まるため、保険料負担に見合った年金給付の実現は困難になります。

(注)詳しくは麻生良文(1995)「公的年金と課税ベースの漏れ」『経済研究』Vol.46,No.4,313-322頁を参照。 

(執筆:馬場 義久)

日々是総合政策No.206

社会保険料の負担(2) 勤労世代の社会保険料負担

 No.202では日本の社会保険料総額の負担について述べました。今回は、勤労世代の社会保険料負担を取りあげます。次の図は勤労者家計(家族数二人以上)の収入階層別に社会保険料負担率と直接税負担率を示します。
 ここで収入は家計の勤め先収入(以下、収入と記す)、直接税は国の所得税と地方住民税等の合計を指します。図の横軸は、家計を収入額によって10階層のグループに分けたものです。各グループとも家計数は家計全体の10%です。Ⅰは、収入の最も低い家計で第1分位と言います。逆にⅩは、収入の最上位10%のグループで第10分位です。
 縦軸の負担率は、社会保険料または直接税(以下、税と記す)が収入に占める割合(%)を表します。企業に雇われている勤労者の社会保険料は、雇い主(企業)と勤労者本人とで半額ずつ支払いますが、この図では本人分のみの負担を示します。

図 収入階層別社会保険料・直接税の負担率2019年
*二人以上の勤労者家計。  
(出所)注より算出。

 橙色の社会保険料負担率に注目すると、収入の最も低いⅠから11%であり、このレベルが10階層にわたり、ほぼ比例的な負担です。ちなみにⅠの収入(月額)は22.6万円であり、社会保険料負担は約2.5万円です。また、Xの収入は104.5万円で社会保険料負担は約12万円です。
 他方、青の税負担率は、Ⅰの4,7%から収入の上昇とともに負担率が増加し、Ⅹでは12.5%です。つまり収入に対する累進的負担となっています(以上の数値は図と注より)。
 重要なのは、ⅠからⅨまでの9つの階層で社会保険料負担率が税負担率を上回っている点です。こうなる主な理由は、社会保険料に控除がなく国の所得税や地方住民税に控除が多く存在するからです。
 国の所得税や地方住民税の税額は以下の式で算出します。
 税額=(給与収入-給与所得控除-所得控除)×税率=課税所得×税率
 他方、社会保険料は
 社会保険料額=標準報酬×賦課率
 です。標準報酬は給与収入と、賦課率は税率とほぼ同じ意味です。つまり、社会保険料は、控除を差引く前の給与収入全額に賦課率を掛けて算出されます。当然、
 給与収入>課税所得ですから、同額の給与収入について税率が賦課率を大きく上回らない限り、社会保険料負担額>税負担額となり、社会保険料負担率>税負担率となります。
 ただ、以上では、保険料を支払う勤労者に社会保障給付が与えられる点を考慮していません。次回には社会保険料の使途を検討する予定です。


e-Stat URL
家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2019年 ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp) 最終アクセス 2021年1月25日。

(執筆:馬場義久)

日々是総合政策No.202

社会保険料の負担(1)

 今回から社会保険料の負担問題を考えます。社会保険料は公的年金や医療などの主要な財源です。まず社会保険料と租税を比較します。
 第一に、その支払はともに国による強制力を背景にした「義務」です。納税は、労働・教育とともに、憲法における国民の三大義務の一つです。社会保険料について憲法の規定はありませんが、年金保険法や健康保険法などが強制力の法的根拠とされています。以上から、社会保険料は租税とともに公的支出を賄う公的負担として、国民負担率に算入されています。
 第二に、社会保険料が租税と決定的に異なる点は、社会保険がその支払者や家族に社会保障の受益権を与える点です。年金保険料支払者には、一定の条件を満たせば老齢年金が支払われます。健康保険料の場合は、実際の医療費の30%以下の自己負担で済みます。他方、消費税をはじめ租税も社会保障の重要財源ですが、税を支払っても社会保障の受益権は与えられません。
 さて、注1によると日本の社会保険料総額は2018年度に72.6兆円です。他方、租税は国税総額が60.1兆円(注2)、地方税総額が41.5兆円です(注3)。社会保険料は国税を上回っています。日本は租税国家であると同時に社会保険国家と言えます。次に、下の図は租税負担率と社会保障負担率の推移(%)を示します。ここで租税負担率とは国民所得に対する租税総額の割合、社会保障負担率は日本では国民所得に対する社会保険料総額の割合を指します。

(出所)注4より作成。

 1990年からの変化に注目すると、租税負担率に比べて社会保障負担率の増加が目立ちます。よって日本は負担率の増加の面でも、社会保険国家と言えます。
 社会保険料が巨額で且つ増加している理由の第一は、社会保障の大部分が社会保険方式であるからです。たとえば、年金を得るには年金保険の加入を条件とします。その結果2018年度では、社会保険料は社会保障財源の54.7%を占め、公費(租税など)の38%を大きく上回っています(注1)。
 第二の理由は、高齢化の進行により、年金・医療・介護の各給付が増大したことです。そのため、たとえば、年金保険料率は2013年度の13.58%から2017年度には18.3%に引上げられました(注5)。


(1) 国立社会保障・人口問題研究所、平成30年度『社会費用統計(概要)』p6。Microsoft Word – H30プレスリリース_解禁なし_20201006 .docx (ipss.go.jp)による。
(2) 財務省URL
kessan_01_18.pdf (mof.go.jp)
(3) 総務省URL
<81798267826F9770817A52318C888E5A8CA98D9E8A7A8169955C329687816A2E706466> (soumu.go.jp)
(4) 財務省URL
負担率に関する資料 : 財務省 (mof.go.jp)
(5) 厚生労働省URL
s0304-3f1.pdf (mhlw.go.jp)
URLの最終アクセスいずれも 2021年1月13日。

(執筆:馬場 義久)

日々是総合政策No.190

スウェーデンのコロナ禍対策(7)

 今回は、スウェーデンにおける新型コロナ感染者数の急増を確認し、政府の対策について紹介します。
 表は7月以降の累積感染者数を示します(注1)。7月から11月はその月初め(一日)時点での数です。11月1日から現在(11月19日)までの急増が目立ちます。11月1日での133327人から19日には208295人になり、感染者が74968人増加しました。19日間の平均で見て一日あたり3945人の増加です。ちなみに、日本の11月22日での新規感染者は2168人でした(注2)。なお、スウェーデンでの死亡者数は11月1日の6023名(累積)から19日の6394名と371名増加しました(注1より算出)。

表 累積感染者数の動向(人)
*各月の月初めでの累積感染者数を示す。現在は11月19日。
(出所)注1に基づき筆者作成。

 スウェーデン政府は最近、二つの新たな対策を発表しました。
 第一は、バーやレストラン、ナイトクラブなどでのアルコール販売を22時から翌日の11時まで禁止する措置です(注3)。スウェーデン全土でこの種の店が約15700あり、その多くが夜にオープンし、翌朝5時ぐらいまで営業するとのことです。この措置は11月11日に発表され、11月20日から2021年2月1日まで実施の予定です。実施期間の長さが注目されます。なお、注3には、禁止措置による当該店の損失を補償する措置は示されていません。ただこの点は、他の文書で発表されている可能性があります。
 第二は、「集会」参加の人数上限を50人から8人にするものです(注4)。ここでの集会とは、コンサート・展覧会・サークルの会合・スポーツ観戦等を指します。ただこれまでと同様、着席して見るイベント(スポーツなど)については、観客同士が1メートル以上離れていれば300人まで可能です。しかし、これまで認めていた、レストランを使用しての集会の例外扱い-感染予防対策の実施を条件にしての例外-は廃止されました。
 この措置は11月16日に発表され11月24日より実施されます。実施期間は「当面4週間を最長としたい」とのことです。きわめて短期間であるのは、社会的コンタクトの制限策は必要最小限にしたいこと、さらに、短期化により、憲法における集会の自由、発表の自由の保障に合致するからと述べています。
 なお、高齢者への訪問を禁ずる措置など検討中の対策もあり、今後の動向が注目されます。

(注)
1.スウェーデン公衆衛生庁 URL
 FOHM Covid-19 (desktop) (arcgis.com)
2.NHK URL
新型コロナウイルス 日本国内の感染者数・死者数・重症者数データ|NHK特設サイト
3.スウェーデン政府 URL
https://www.regeringen.se/4abc0c/contentassets/7cf53b1760ce422a987f59eb9cb77bd0/forslag-till-forordning-om-tillfalligt-forbud-mot-servering-av-alkohol.pdf
4.スウェーデン政府 URL
https://www.regeringen.se/4ac71c/contentassets/0bd9b64752314859b1847328f7eb9b4a/forbud-mot-att-halla-allmanna-sammankomster-och-offentliga-tillstallningar-med-fler-an-atta-deltagare.pdf

URLの最終アクセスいずれも 2020年11月24日。

(執筆:馬場 義久)

日々是総合政策No.183

スウェーデンのコロナ禍対策(6)

 スウェーデンのコロナ禍による死亡者について新しいデータ(注1)が公表されましたので、今回はそれを紹介します。このデータは9月28日までの死亡者5826名についてのものです。なお、10月6日現在の死亡者は5892名(注2)です。同データは死亡者について年齢、コロナ以外の疾患、居住地、居住住宅、死亡場所などを明らかにしています。下の表1はその一部を筆者が抽出したものです。
 まず総数全体を男女別に見ると男性が女性を上回っています。次に年齢別では、5211名(総数の89.4%)が70歳以上で、2899名(49.4%)が85歳以上です。死亡者の大部分は高齢者です。
しかし、年齢別を男女別に見ると85歳以上では女性の方が多くなっています。表1では示していませんが、5歳刻みの年齢で男女間を比較すると84歳以下までは男性が多く、85歳以上から女性が多くなっています。ちなみに2019年のスウェーデンの男性の平均寿命は80.75歳、女性のそれは84.24歳です(注3)
 次の疾患の欄は感染時におけるコロナ以外の疾患数を示します。死亡者の58%が二つ以上の疾患を抱えていました。主な疾患は心臓病・高血圧・糖尿病・肺疾患です。一番多いのは高血圧です。

表1 死亡者の構成(人、%)
(出所)注1より筆者抽出。

 さらに死亡者の住居構成を見たのが居住の欄です。ホームヘルプ欄は自分自身の住宅で、ホームヘルプ(訪問介護・看護)を利用している高齢者を指します。
 特別住宅は、ホームヘルプ以上の介護サービスを必要とする高齢者の為の施設で、その入居対象は身体疾患等を抱え24時間ケアが必要な高齢者です(注4)。なお、注5によれば、2019年の特別住宅の入居高齢者は87000人です。
 つまり、全死亡者の46.2%が特別住宅という介護施設の入居者でした。表2がその死亡者の内訳を示します。「ストックフォルム」とはストックフォルム県にある特別住宅の死亡者を表します。同県は全スウェーデンの21県のうちの最大人口県で、日本での東京都に該当します。

表2  特別住宅居住の死亡者(人)
(出所)注1より。

 注5によれば2019年の特別住宅の20%は民営であり、2007年の15%より民営が増加しています。このような民営化傾向も踏まえて、高福祉国家の高齢者介護サービスの中心的施設で、なぜ多くの犠牲者が出たのか、その原因解明が求められます。


1.スウェーデン社会庁URL
https://www.socialstyrelsen.se/statistik-och-data/statistik/statistik-om-covid-19/statistik-over-antal-avlidna-i-covid-19/
2.スウェーデン公衆衛生庁URL
https://fohm.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/68d4537bf2714e63b646c37f152f1392
3.スウェーデン国家中央統計局URL
https://www.scb.se/en/finding-statistics/statistics-by-subject-area/population/population-composition/population-statistics/pong/tables-and-graphs/yearly-statistics–the-whole-country/life-expectancy/
4.石橋未来[2016]「スウェーデンの介護政策と高齢者住宅」『大和総研調査季報』
Vol.21,154-169頁。
5.Socialstyrelsen[2020] Statistics on Elderly and Persons with Impairments – Management Form 2019.

URL いずれも最終アクセス 2020年10月9日。

(執筆:馬場 義久)