日々是総合政策 No.30

トランプ大統領の公約と財政面から見た真実(下)

 トランプ大統領は、2016年の大統領選挙に際して大規模減税で経済成長を促し、雇用増を図ろうとする、共和党伝統の政策を掲げた。特に法人税率の35%から15%への引下げ、所得税率の3段階簡素化、遺産税の見直し等の大規模減税を公約にした。トランプ政権は17年12月末に公約そのままではないが、レーガン減税以来といわれる、10年で約1.5兆ドルの大規模減税法(2017年減税・雇用法)を成立させ、18年1月から実施に入った。その内容は、①法人税率を35%から21%に18年から引下げ、②海外所得の還流時課税を廃止し、海外資産に一度切り課税、③所得税最高税率の引下げ、④遺産税の減税、⑤オバマケア罰則金廃止等である。果たしてその経済効果はどうか。
 トランプ政権は、減税効果で実質GDP成長率が18年に3.1%それ以降20年まで3%を超える状態が続くと強気であった。だが、18年は2.9%の成長にとどまった。超党派の議会予算局の「予算と経済見通し2019-2029」は、減税効果が薄れる20年以降は実質成長率が19-23年2.0%、24-29年1.7%に落ちるとする低い予測を出している。
 また、トランプ政権は、減税や規制緩和で経済成長すれば、税収増で財政収支は改善し、任期の8年で債務を完済すると主張した。だが、法人税収が22%も減少し、18年度の財政赤字は、前年度より17%増えて7790億ドルとなった。議会予算局は上述の資料で、財政赤字は20年度が8960億ドルだが22年度は1兆ドルを超えて増えて行き、29年度には1兆3100億ドルになると予想する。政府債務は18年度の15.8超ドルから8年後の26年度には24.6兆ドルに膨らむと予想する。
 さらに、トランプ政権は、減税・雇用法は中間層と中小企業のために減税だと主張していたが、現実は違う。租税政策研究所の資料「共和党税法下の租税便益の大半は最富裕層に帰着」によると、同法が27年まで完全に実施されたとして、減税便益の99.2%がトップ5%の家計(富裕層)に行き、第3五分位を中間層とするとこの層は2.1%便益が減る。
 以上、トランプ政権の財政(減税)政策は、経済成長、財政赤字改善、減税便益の効果のいずれの点においても、短期的な効果は多少あっても長期的には効果が低いか望ましくない結果になるというのが、真実の姿である。

(執筆:片桐正俊)

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