金融規制の緩和と強化
虚偽な財務報告をしていたなどと企業経営者が頭をさげている姿が、ときどき報道され
ています。金融自由化、規制緩和は市場の効率を高め生活を豊かにしてくれるはずですが、不誠実な企業行動は私たちを不安に陥れてしまいます。
そこで、一口に規制と言っても、何を緩和するのか、あるいはその逆に何を強化しな
ければならないのかを、考えざるを得ないことになります。実は、金融規制には、経済規制、プルーデンス規制、情報規制の3つの型があります。このうち、経済規制とは、金利規制、業務分野規制、国内・外国企業の参入規制などのことです。プルーデンス規制とは、銀行法、自己資本比率、格付け、情報開示のように金融システムの安全性および健全性を保ち、貯蓄者、投資者を保護する規制のことです。情報規制とは、銀行、保険会社、証券会社それぞれが取引きする金融商品の価格と数量を会計基準に従って報告する義務を負わせる金融インフラのことです。
日本を含め東アジア諸国は、欧米諸国に比べて、経済規制が厳しい反面、プルーデンス
規制と情報規制が弱いと言われてきました。しかし、日本の場合、1980年代半ば以降、 政府開発金融機関の縮小などあらゆる種類の金融機関の民営化を実施し、市場メカニズムに基づく金利や株価決定を重視するようになっています。また、外銀(外資系投資銀行)や外国証券会社の参入、非居住者の預金および証券投資規制を緩和しています。その反面、金融機関間の競争激化とグローバル化の進展に応じて、バーゼル合意(国際業務に従事する銀行の監督を目的として、主要国の金融監督当局と中央銀行によって構成されている「バーゼル銀行監督委員会」が定め、公表している自己資本に関する国際統一基準)の実施、時価会計の採用、大口融資規制などのプルーデンス規制やその基盤となる会計基準を強化しています。
さらに、クラウドファンディングなどの新しい金融そして新しい仲介業者や運営業者が誕生するのにつれて、市場を活性化する規制緩和を実施すると共に、個人投資者を保護する規制強化が新たに試みられるようになっています。しかし、今後も、規制緩和と強化の組み合せが、絶え間のない課題になりそうです。
(執筆:岸 真清)