日々是総合政策No.321

日本の税と可処分所得(12)-高齢者は貧しいか?

 本コラムNo.320では、勤労者の健康保険による高齢者への所得移転(仕送り)の現状を紹介しました。今回は、仕送りを受取る高齢者世帯の手取り所得と貯蓄残高を他の世帯と比較します。受取側の経済状態を見るわけです。
 手取り所得(可処分所得)を比べます。高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又は、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平均等価可処分所得は、年額221.1万円で、その他の世帯(全世帯から高齢者世帯と母子世帯を除いた世帯)の平均等価可処分所得は、325.9万円です(注の表1-2-1-11より)。
 ここで、等価可処分所得とは、世帯の手取り所得を世帯人員の平方根で割った値です。
 4人世帯の手取りが600万円、単身世帯のそれが150万円とすると、ともに1人当り手取りは150万円ですが、両者の生活水準は同じではありません。世帯人員が増えるにつれて、一人当り生活費が割安になるからです。水道代や光熱費等をはじめ、4人世帯の生活費は単身世帯の4倍未満になります。「規模の経済」の一例です。
 この点を考慮した等価可処分所得では、4人世帯の手取り600万円を4ではなく、ルート√4(=2)で割ります。つまり300万円です。ここで、4人世帯で手取り600万円の一人当り生活水準は、単身での手取り300万円の生活水準に等しいとされます。
 高齢者世帯の平均世帯人員は1.54人で、その他世帯の平均世帯人員は2.62人です(注の表1-2-1-11より)。その違いを考慮した平均等価可処分所得は、前述のように、高齢者世帯の方が低い。
 しかし、二人以上の高齢者世帯の平均貯蓄残高は2462万円で、二人以上の全世帯(高齢者世帯を含む)の同残高は1904万円です。また、二人以上の高齢者世帯の18.8%は4000万円以上の貯蓄残高ですが、二人以上の全世帯のうち、貯蓄残高が4000万円以上となるのは12.9%です(注の図1-2-1-15より)。
 貯蓄残高を考慮すると、高齢者世帯の平均的な経済力は全世帯に比べ低くありません。貯蓄残高の多い豊かな高齢者世帯も、勤労者世帯から健康保険による仕送りを受取っているわけです。

内閣府『高齢生活白書・令和7年版』
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/html/zenbun/s1_2_1.html
最終アクセス 2026年4月10日。

(執筆 馬場 義久)

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