日々是総合政策No.289

スウェーデンの地方税(1)-本コラムの主題

 これからスウェーデンの地方税を取りあげます。今回は同国の地方税の基本的な特徴を紹介し、本コラムの主題を提示します。
 スウェーデンの地方政府は20のランスティング(都道府県に該当、以下、県と略記)と290のコミューン(市町村に該当、以下、市と略記)からなります。以下の地方税とは、県税と市税の両方を指します。
 スウェーデンは地方分権の国で、地方政府が当該地域の公共支出の提供責任を負います。これは、国よりも地方政府の方が地方支出に対する住民のニーズを熟知していると考えるからでしょう。同国の地方支出の中心は、医療(県が担当)、教育・児童保育・介護(市が担当)です。
 地方支出を賄う税については、地方政府に「どの税を採用するか」という税目の選択権は与えられず、勤労所得税のみが認められています。なお、同国の勤労所得税の課税対象は労働所得だけでなく、失業給付・疾病給付・年金等を含みます。労働に伴うリスク-失業・疾病・退職-に直面している「広義の勤労者」の得る所得(社会保障給付)も、リスクに直面していない勤労者の労働所得と同じように課税するという考え方と思われます。年金も課税するので全世代型勤労所得税です。
 他方、地方政府は税率決定権を持ちます。2021年の290の全市における税率(県と市の合計税率)を見ると、29.08%から35.15%に分布し平均は33.17%です。しかし、全市の約80%が32.05%から34.95%に属しています(注に基づき、筆者算出)。なお、同一地方政府内では均一税率(比例税率)で、住民の勤労所得額に関わらず同一の税率が適用されます。
 本コラムでは、勤労所得税のみを地方税とする方式(以下、単一税方式と略記)に注目します。他の多くの国々は地方税として多様な税を採用しているからです。たとえば、日本では、勤労所得税をはじめ資産所得税・法人住民税・固定資産税・地方消費税などが地方税です。いわゆるタックス・ミックス型ですね。スウェーデンの単一税方式のメリット・デメリットは何か?この点を考えます。


Statistiska Centralbyrån, SCB(2024)https://www.statistikdatabasen.scb.se/pxweb/sv/ssd/START__OE__OE0101/Kommunalskatter2000/ 2024.1.10参照。

(執筆:馬場 義久)

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