大阪都構想住民投票と憲法の首長直接公選制保障
大阪都構想は、11月1日に大都市域特別区設置法に基づき、2度目となる住民投票に付される。大阪都構想は、「大阪市」を廃止し、大都市地域特別区設置法に基づき四特別区に再編することを主な内容とするが、新設四特別区は、憲法の「地方自治の制度的保障」の対象となる地方公共団体なのかは不明だ。大日本帝国憲法になく、日本国憲法で新たな章立てとして加わったのは、第2章の「戦争の放棄」と第8章の「地方自治」だ。その意義は、地方自治関係者が胸に刻むべきことだろう。
地方自治の章がなかった大日本帝国憲法下においては、1943年に最も大きな自治体であった東京市が市会の反対にも関わらず、国の立法によって一夜にして消滅した。 それでは、憲法で地方自治について保障していることは何か。ここで議論するのは、その中の首長直接公選制保障だ。憲法93条2項は「地方公共団体の長・・・は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」と規定する。1963年に最高裁は、東京都の特別区は憲法93条2項の地方公共団体と認めることはできず、特別区長公選制を廃止したことは、立法政策の問題で憲法93条2項の地方公共団体の首長の直接公選制保障規定に反しないと判断した。
この63年最高裁判決は、憲法上の「地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず」、「事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在」することや、その沿革も検討し、東京都の特別区に首長直接公選制保障は及ばないと判断した。新設される大阪府の四特別区それぞれが、憲法上の「地方公共団体」と判断されるのかは難しいのではないか。
63年の最高裁判決上、現在の大阪市は多分憲法93条2項の地方公共団体だろうから、憲法上市長公選は保障されている。しかし、今回の住民投票で大阪市が四特別区に再編されれば、63年の最高裁判決に照らせば、大阪市民にとって、今回の住民投票は、自らが属する最も身近な基礎的な地方公共団体の首長公選制の憲法保障を、自らの投票で放棄し、離脱するかを選択する投票なのだろう。
(注)1963年の最高裁判決については、https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~suga/hanrei/93-3.html (最終アクセス:2020.10.1) を参照されたい。
(執筆:平嶋彰英)