日々是総合政策No.322

日本の税を考える-消費税再考(1)

これからの数回、消費税政策のあり方を考えます。まず、逆進性の現状を確かめましょう。

図 消費税の収入階層別負担率(% 2024年)

(出所)注に基づき筆者算出。

 図の横軸は、二人以上の世帯における年間収入階層(10分位)を表します。第1階層が年間収入の最も低い(最下位10%)の世帯です。世帯は勤労者世帯のみではなく総世帯です。消費税は高齢世帯も負担するからです。
 縦軸は、消費税負担率、すなわち、消費税負担額が収入に占める割合(%)です。なお、収入も消費税負担額も月額です。
 最高が第1階層の7.46%で、最低が第10階層の2.65%です。年間収入の低い階層ほど負担率が高いので、消費税は年間収入に対して逆進的です。逆進的負担の問題点は、課税により所得逆再分配が生じることです。課税前、第10階層の収入は124万6666円で、第1階層の18万833円の6.89倍でした。他方、消費税を引いた税引収入は、第10階層が121万3566円で、第1階層の16万7338円の7.25倍になります。消費税が収入格差を若干広げるわけです。
 なぜ、逆進性が生じるのか?その理由は消費支出のかなりの部分が、日常生活の維持にとって必要不可欠だからです。たとえば、食料品・衣料費・光熱費・水道費・交通費等です。これらは、たとえ、ある年の収入がゼロであっても必要です。収入がプラスでもその値が低い階層は、これらの消費支出に収入の大部分を充てなければなりません。他方、収入の豊かな階層は余裕があり、消費後も多くの貯蓄が可能です。消費税は貯蓄に課税しないので、その分、消費税負担を逃れます。「貯蓄による消費税逃れ」です。年間収入が低い階層ほど収入に占める消費の割合が高い(=貯蓄の割合が低い)ので、低収入階層ほど収入に占める消費税負担額の割合(消費税負担率)は高くなります。
 ただ、「貯蓄による消費税逃れ」は、多くの場合一時的です。貯蓄の重要な目的が将来の消費に備えることだからです。現役期にS億円の貯蓄により消費税を逃れても、退職後の高齢期にその元利合計を全額引出して消費に回せば、現役期の消費税逃れは消滅します。ただ、貯蓄の元利合計の一部を配偶者などに遺贈すれば、相続税率が消費税率より低い場合、一部、消費税逃れが可能です。

    

家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 2024年より。最終アクセス 2026年5月20日                            

(執筆 馬場 義久)