日本の税と可処分所得
可処分所得(以下、手取り)に対する関心が高まっています。手取りとは、稼いだ所得のうち消費や貯蓄に使用できる部分を指します。今回は、勤労者世帯を取りあげ、手取りの現状の概略を紹介します。
図 年間収入階層別負担率(%) 2023年

(出所)注に基づき筆者算出。
図の横軸は、二人以上世帯のうち、勤労者世帯(世帯主が勤労者)における年間収入の10階層を表します。同世帯の総数を100%とし、第1階層は年間収入が最下位10%の世帯、第10階層は最上位10%の世帯です。年間収入の殆どは勤め先収入ですが、資産収入などを含みます。
縦軸は、勤め先収入(以下、勤労所得)に占める社会保険料(以下、保険料)と税の割合(=負担率%)です。
手取り=勤労所得-(保険料の本人拠出分+国の勤労所得税+地方の個人住民税)、と定義します。雇われている被用者の保険料の半分は雇い主が払うので、本人支払分のみを負担とします。勤労に伴い生じる公的負担に注目するため、固定資産税等の「その他の税」は捨象します。
よって
手取り=勤労所得―(保険料+税)、より
手取り÷勤労所得=1―(保険料負担率+税負担率)となります。
以下、金額は月額です。
橙(保険料負担率)と青(税負担率)を比較します。第9階層まで、保険料負担率が税負担率を大きく上回っています。手取りを左右するのは保険料です。ちなみに、第1階層では、勤労所得が243292円、税が8233円、保険料が28295円、手取りは206764円です。
さらに、保険料負担率は全階層間でほぼ同一です。第1階層が11.6%、第10階層が11.9%で、最低収入階層から最高収入階層並みの高負担率です。同一負担率なので再分配は生じません。最低階層への配慮が無いわけです。
他方、税負担率は第1階層が3.4%、第10階層が11.4%と、低率ながら累進的負担です。よって、再分配が生じます。
橙と青の合計が緑(合計負担率)で、15%から23.3%の間の分布です。
なぜ、保険料負担率が第1階層から高いのか?その「制度的」な理由は、勤労者の保険料に控除を認めず、かつ、基本的に、各勤労所得水準に対して同一の保険料率を課すからです。たとえば、勤労所得が20万円の場合、厚生年金の保険料は20万円×0.0915=18300円です。
注
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最終アクセス 2025年3月22日。
(執筆 馬場 義久)