地方創生の現場から(上)
2015年度からスタートした5か年の「地方創生」の取り組み(総合戦略)は、今年度で最終年を迎えています。そして、今まさに各地方自治体は来年度からスタートする第2期の総合戦略を練っているところです。私自身も複数の自治体で総合戦略推進会議という外部機関等でこの過程に携わっています。本コラムでは2回に分けて、「地方創生」の現場で感じた課題について述べたいと思います。
「地方創生」は「まち・ひと・しごと創生法」(2014年11月公布)を根拠にしており、そのもとで、国は2060年に1億人程度の人口を確保する展望を示した「長期ビジョン」と2015年度から19年度の人口対策を示した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、都道府県と市区町村も同様に「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を策定しました。
「地方人口ビジョン」は国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口をベースに、各自治体が独自に推計した2040年頃の(「将来展望」と呼ばれる)将来人口を示したもので、「地方版総合戦略」は、「将来展望」を実現するために、5年間で実施する出産・子育てや移住・定住等の戦略とその目標を示したものです。
地方創生の結果はどうなったのでしょうか。残念ながら、国と地方の総合戦略は全体としてみると惨憺たる結果になっています。出生数は減少の一途を辿り、地方から東京圏への人口流出は減少するどころかむしろ増えています。
その一方で、自治体の現場に足を運ぶと、この5年間で起きた数字に表れていない質的な変化を確認することができます。例えば、ある地域では若い移住者の存在が目立つようになりました。彼らは仕事がないといわれる地方において、地域課題解決型のビジネスモデルを創り出し、行政との連携を始めています。また、地域課題解決のための若者たちの自主的な活動が生まれた地域では、若者のアイディアが行政の事業に採用されています。反対に、外国人の旅行者や就業者が増えたことで、雇用面や生活面での新たな地域課題も発生しています。
各自治体の総合戦略の結果は、人口ビジョンとともに、ホームページで公開されています。他の自治体と比較すれば、人口問題に取り組む姿勢もわかるはずです。読者の皆さんにもぜひ確認していただきたいと思います。
(執筆:鷲見英司)