日々是総合政策No.317

日本の税と可処分所得(8)-社会保険料

 勤め先収入(以下、収入)の増加額に占める社会保険料(以下、保険料)の増加額の割合を検討します。増加額とは、2023年の値-2003年の値です。表の見方など、適宜、注1を参照ください。 

表 収入の増加額に占める保険料の増加額の割合

(注記)1.増加額は月額。
2.増加率は増加額÷2003年の値。
3.B/Aは、収入増加額に占める保険料増加額の割合(%)。
(出所)注2に基づき筆者算出。

 表は、収入の増加額Aと保険料の増加額Bを10段階の収入階層別に示します。注1より
 B/A=(保険料増加率÷収入増加率)×(2003年の保険料÷同年の収入)
となり、B/Aは二つの増加率の相対比と2003年の保険料負担率で決まります。
 表から第1・第2・第10階層のB/Aは順に、44.8%・44.1%・22.9%で、第1・第2階層が第10階層より約21%も高い。その主因を探ります。
 保険料増加率では、第1階層は第10階層の0.86倍(0.3911÷0.4547)、第2階層は0.49倍です。この点は、第1・第2階層のB/Aを第10階層より引下げます。
 2003年の保険料負担率は、第1が、9.02%、第2が9.88%、第10階層が9.77%(注2より算出)と、ほぼ比例的なので、第1階層のB/Aは第10階層より若干の低下、第2階層はわずかの増加となります。
 上の式から、収入増加率はそれで割った値がB/Aを決定するので、1÷収入増加率を比べます。表の同逆数欄より、第1階層は第10階層の2.46倍(12.69÷5.158)、第2階層は3.85倍です。この点は、第1・第2階層のB/Aを第10階層より大幅に引上げます。 
 結局、B/Aを第10階層より高めた主因は、第1・第2階層の収入増加率の低さです。
 ちなみに、第1・第2階層の保険料引き手取り増加額(A-B)は、9808円・8404円に過ぎません。ともに税控除前の値です。
 また、保険料控除前における第1・第2階層の収入増加額Aは、第10階層の0.1倍・0.084倍でしたが、保険料控除後の手取り増加額は、第10階層(136924円)の0.071倍・0.061倍に低下しました。
 収入増加率の低い低収入階層に対する保険料引上げ策の再検討が望まれます。


1 本コラムNo.316
2 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 2003年・2023年より。
最終アクセス 2025年11月20日。

(執筆 馬場 義久)

                               

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA