スウェーデンの地方税(5)-税の偏在③
今回は地方税の偏在度(変動係数)について、スウェーデンと日本を比較します。日本の計測値は橋本の労作(注1)からの引用です。
図1 スウェーデンと日本の一人当り地方税収の変動係数 (2006-2017年)
(出所)1.地方税J(日本)は注1、191頁、図1より。
2.地方税S1,S2(スウェーデン)は、注2より筆者算出。
図2 日本の税目別一人当り税収の変動係数(2006-2017年)
(出所) 注1、192頁、図2より。
図1は日本(J)とスウェーデン(S)の住民一人当り地方税収 (ともに道府県税と市町村税の合計で、Jは道府県単位、Sはコミューン単位)の地域間変動係数を示します。S1は実際の税率下の税、S2は各地域の税率を同一とした税です。一貫してJの変動係数がS1とS2より高い。その原因を図2により考えます。
原因の第一は、地方法人2税(法人住民税と事業税)の存在です。ともに法人企業の事務所などの所在地で課税され、東京等の税収が多くなり変動係数を高めます。スウェーデンは1975年に地方法人税を廃止しました。
原因の第二は、個人住民税です。最も低い2017年でも0.21近傍でS2(0.13)の1.6倍です。その要因として、まず、個人住民税の配当税・キャピタルゲイン税(税率5%)が考えられます。これにより、富裕層の多い道府県がより多くの税を得ます。他方、S2・S1は資産所得に課税しません。
次の要因として、個人住民税の所得割(比例税率10%)における多額の所得控除(給与所得控除や公的年金控除など)が考えられます。税率を0.1、課税前所得をY、所得控除をE、税額を
TとするとT=0.1(Y―E) より
T/Y=0.1(1―E/Y) となります。右辺のYが高くなるとE/Yが低下して右辺全体が増加し、結局、高いYほどT/Yが高い累進的負担となり、Yの高い地域ほど税がより多くなります。なお、S2・S1には、多額の所得控除はありません。
ただ、原因の第二については実証分析が必要です。
注
1.橋本 恭之(2020)「地域間の税収格差について」関西大学『経済論集』第69巻第4号
2.Statistiska Centralbyrån, SCB(2024)https://www.statistikdatabasen.scb.se/pxweb/sv/ssd/START__HE__HE0110__HE0110B/Skatter
2024年4月1日参照。
(執筆:馬場 義久)