家事労働を考える(4)-男女分担の改善策
今回は家事労働の男女分担の改善策を考えましょう。下の表は本コラムNo. 251で紹介した表から日本の部分を抽出したものです。結婚や子供の有無を区別しない15~64歳の男女全体が対象です。無償労働の中心は家事労働(育児・介護等を含む)です。有償労働はおおむね市場労働を指し通勤時間を含みます。時間の測り方は一週間の曜日ごとの平均の和(月曜の平均+・・・+日曜の平均)を7で割った、週全体平均の一日あたり時間です。日曜を含むことに留意しましょう。男女比=女性の時間÷男性の時間です。
労働の男女分担(日本) 分
男性と女性の総労働時間はおおむね等しく490分台となっています。ところが男性の有償労働(以下、労働と記す)の長さと無償労働(以下、家事と記す)の短さが目立ちます。また労働の男女比-女性の低さ-も気になります。
そこで男性の労働を減らして家事を増やし、それにより女性の家事を減らし、女性の労働を増やすという方策が考えられます。
しかし、この方策は家計の収入を減らす可能性があります。それは男女間の賃金ギャップが存在するからです。注2によると、日本女性の賃金は男性の賃金を100とすると、77.5%に過ぎません(男女ともフルタイマーの賃金)。つまり、賃金ギャップが22.5%です。この値は、男性賃金の中央値と女性賃金の中央値の差です。中央値はデータ(賃金)を高い順番に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する値です。日本の22.5%はOECD諸国の3位です。ちなみに1位は韓国で31.5%、OECD平均は11.6%です。
さて、以上から、男性の時間当り賃金X円>女性の時間当り賃金Y円が成立ちます。ここで男性が家事を増やすため1時間労働を減らすと収入がX円減り、女性が家事を減らして1時間労働を増やし収入がY円増加しても、家計の収入は(X-Y)円減ってしまいます。
そこで、賃金収入を減らすことなく労働時間を削減して、家事の男女分担を改善する意欲を高めることが重要です。たとえば、テレワークや業務情報のデジタル化の推進が考えられます。とくに、テレワークは通勤時間を減らしつつ、対面方式での会議や取引を減らす効果があります。
注
1.内閣府男女共同参画局URL
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/column/clm_01.html 図表1[CSV形式:2KB]より。
2.OECD URL
https://data.oecd.org/earnwage/gender-wage-gap.htm
(執筆:馬場義久)