地方創生の決め手か? 子育て優遇政策
人口減少が経済停滞の一因になっています。国勢調査によれば、2005年から2020年にかけて、全国の人口は1,541,426人減っています(注1)。都道府県別では、東京都、沖縄県、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、滋賀県、福岡県、大阪府だけが増加していますが、その他、秋田県、青森県、岩手県、高知県などすべての地域で減少しています(注2)。この中で、千葉県・流山市の人口は、152,673人から199,849人へと30.9%増加、東京都の増加率11.8%を上回っています(注3)。
都心から近い緑のまち流山市の活性化が、2005年のつくばエクスプレス(TX)の開通に促進されたことは否定できません。しかし、それにもまして、共働き子育て夫婦に焦点を当てた優遇政策をはじめとして、市民の安心感を誘う健全で効率的な行財政、市民の参加とコミュニティを重視するさまざまな政策(注4)が実っています。
たとえば、子育てに関して、子ども家庭総合支援拠点や子育て世代包括支援センターの
設置など子どもを生みやすい環境づくり、次いで保育園の増設、病児・病後児保育、駅前送迎保育ステーションの設置、そして学童クラブや相談体制の拡充のように子どもの成長に沿った政策が実施されています。行財政は、少ないスタッフ数やマーケット課の設立など強い経営意識の下で遂行されています。この効率的な自治体経営を可能にしているのが、自治会を奨励、市民活動推進センターを設立しながら市民・民間団体との協業を実践する地域社会づくりです。
これらの政策が人の流れを変えつつあるように思われます。東京都の県外移動状況を見てみますと、2005年の転入者数が438,087人、転出者数351,525人であったのが、2020年に転入者数が401,168人に減少する一方、転出者数は362,794人に増加しています(注5)。内閣府のアンケート調査によれば、東京在住者の4割が地方への移住を望む中で、10~30代の女性は結婚・子育てを主なきっかけにしています(注6)。共働き子育て夫婦を主対象とした構想と実施計画をオープンにした上で、市民の参加を促す流山市の政策スタンスが参考にされる機会が増えそうです。
(注1)2005年と2020年の人数は各年の10月1日を基準にしています。総務省統計局「令和2年国勢調査」(https://www.stat.go.jp/data/ kokusei/2020/kekka/pdf/outline.pdf)
(注2)総務省統計局「令和2年国勢調査」及び「平成17年国勢調査」(https://www.
e-stat. go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200521&tstat=000001007251)
より計算。
(注3)千葉県「千葉県統計年鑑(平成17年)」(https://www.pref.chiba.Ig.jp/toukei/ toukeidata/nenkan/nenkan-h17/index.htmI) 及び流山市「流山市の常住人口」
(https://www.city.nagareyama.chiba.jp/information/1008422/1008423/1008457.html)
(注4)流山市総合政策部企画政策課「流山市総合計画 基本構想・基本計画」
(https://www.city.nagareyama.chiba.jp/res/projects/default_project/_page/001/0 07/327/sougoukeikaku.pdf)及び「流山市総合計画 実施計画(令和2年度版)」 (https://www.city.nagareyama.chiba.jp/res/projects/default_project/_page/001/007/327/r2jissikeikaku.pdf)
(注5)東京都「東京都住民基本台帳人口移動報告令和2年」(https://www.toukei.
metro.tokyo.Ig.jp/jidou/2020/ji-data2.htm)
(注6)内閣府「「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」の結果概要について」
(https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/souseikaigi/h26-09-19-siryou2.pdf)
注のURLの最終アクセスはいずれも2022年1月23日。
(執筆:岸真清)