IMFの分析は日米の感染症対策の失敗を示唆する
IMF(国際通貨基金)は、2020年10月13日公表予定の世界経済見通し(World Economic Outlook)のうち、新型コロナウイルス感染症対策を分析した第2章「大封鎖の経済的影響の解剖」を10月8日に公開した。
第2章では、人の移動に関するGoogleのデータと、求人情報サイトIndeedの求人データを用いて、感染症流行の当初7か月間における経済・社会状況が分析される。取り上げる感染症データは89か国、移動データは128か国、求人データは22か国、地方レベルの感染症データは15か国373箇所、移動データは15か国422箇所に及ぶ。
暫定的分析であるとはいえ、その本格的な分析は注目に値する。そこでは、以下のような重要な分析結果が示される。
(1)強制的なロックダウン(封鎖)措置だけでなく、自発的なソーシャル・ディスタンシングも、経済と求人の縮小に大きく貢献した(2つはほぼ同等な負の経済的影響を及ぼす)。
(2)ロックダウン措置の緩和によって経済が部分的に回復するものの、感染症リスクが終息するまでは完全な回復には至らない可能性が高い(自発的な自粛が残るので)。
(3)移動に関するデータの分析から、ロックダウンは、女性と若年層の移動に対して、より強い影響を及ぼした。
(4)女性の移動が強く落ち込んだのは、例えば学校閉鎖期における児童の世話や育児の負担が女性に集中したことを反映したものと考えられる。
(5)外出自粛(stay-at-home)によって若年層の移動が他の年齢層より大きく落ち込んだ。若年層が労働所得に依存し、非正規労働に就くことが多いことを考慮すると、これは若年層と高年層の世代間格差を拡大させる可能性がある。
(6)ロックダウンは、コロナ流行の初期に、十分に厳格に実施された場合には、感染症拡大をかなり抑制することができる。
(7)ロックダウンは、短期的には経済を縮小させるものの、長期的にはウイルス拡大を封じ込め、ソーシャル・ディスタンシングの必要性を低下させることによって、より急速な回復を実現させることにより、経済全体にはプラスの影響を及ぼすであろう。
上記のうち、(6)と(7)は、日米の感染症対策の失敗を示唆するものとして注目される。
(執筆:谷口洋志)