コロナ感染拡大と隔離
8月1日時点で、東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数は過去最高472名に達しています。全国で見ても、7月31日1580人、8月1日1536人と、新規感染者数が1500名を超えています(注1)。
コロナ感染の拡大防止には、PCR検査や抗原検査を拡充し感染者を同定して(見極めて)隔離することが重要であると広く認識され、とりわけPCR検査の拡充が求められています。しかし、隔離の対応次第で医療資源逼迫の心配も出てきます。
コロナ感染症患者については、原則として、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療の法律(平成10年法律第114号)」第19条に基づく入院措置が行われていました。しかし、2020年3月に、地域での感染拡大により入院の必要な患者が増大し重症者や重症化のおそれの高い者に対する入院医療の提供に支障をきたすと判断されたとき、症状がない者または医学的に症状が軽い者(以下、「軽症者等」という)については、自宅での安静・療養が原則とされました(注2)。4月には、地域で感染が拡大した状況では、軽症者等については、自宅療養だけでなく宿泊療養(ホテルなど宿泊施設での隔離)もなされるようになり、その後に宿泊施設が十分に確保されているような地域では家庭内での感染事例が発生していることや症状急変時の適時適切な対応の必要性から宿泊療養が基本とされました(注3)。そして、新型コロナウイルス感染症の軽症者等の宿泊療養及び自宅療養に係るマニュアル等が定められ改訂もなされています(注4)。
これは、PCR検査や抗原検査で陽性と判定された新規感染者を対象に、軽症者等の隔離措置を定めたものですが、PCR検査や抗原検査の対象者をどこまで拡充するかが議論されています。
いわゆるクラスター対策は、濃厚接触者を対象にPCR検査を行って感染者を同定し隔離することをめざしていますが(注5)、今後は特定活動分野の人々を対象とする定期的な検査や誰にでも何度でも検査を行い、より多くの感染者を同定し隔離する体制を構築することが必要になります。そうした体制のもとで大量に増大すると考えられる軽症者等の隔離措置の再検討や、中等症患者の入院医療強化が求められています。
(注1)NHK「8月1日 新たに確認された感染者数(NHKまとめ)」(8月1日20:30時点) を参照。
(注2)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」(令和2年3月1日付け事務連絡) 、同「新型コロナウイルス感染症患者の自宅での安静・療養について」(令和2年3月17日付け事務連絡) を参照。
(注3)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」(令和2年4月2日付け事務連絡) 、同「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の考え方について」(令和2年4月23日付け事務連絡) を参照。
(注4)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部「新型コロナウイルス感染症の軽症者等の宿泊療養及び自宅療養に係るマニュアル等の改訂について」(令和2年6月15日付け事務連絡) を参照。
(注5)国立感染症研究所感染症疫学センター「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年5月29日暫定版)」 によれば、「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間(症状を呈した2 日前から隔離開始まで)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者と定義されています。
・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。
以上のリンク先URLすべて、最終アクセス2020年8月1日。
(執筆:横山彰)