コロナ後の世界 (3) 「リモートワーク」が変えること
私たちは、新型コロナウイルス感染症のワクチンや治療薬が開発され、そのワクチンや治療薬が十分な供給体制が構築されるまでは、新型コロナウイルスを意識し、感染のリスクを常に想定しながら、社会経済活動の在り方を組み立てていくしかありません。
政府による緊急事態宣言の発出後、在宅での「リモートワーク」を導入した職場が増えました。「リモートワーク」は、新型コロナウイルスのリスクを想定する生活においては、益々、普及を目指していくべき取り組みでしょう。そのためには、零細・中小企業でのICT投資の拡大が必要となります。また、個々の家庭のICT環境の整備も欠かせません。この点は、政府の経済対策としても重点的に取り組むべき項目と言えます。
これまでの日本社会では「ハンコ」が重要な役割を果たしてきました。契約時、社内での決裁時など、印鑑を必要とする書類が多くあります。ICT技術を活用した「リモートワーク」になると、回覧される書類も契約書類も紙ではなく、電子ファイルになることも多くなるため、「ハンコ」を押すということも少なくなるかもしれません。これは日本文化の大きな変容と言えるかもしれません。
「リモートワーク」の普及は、「就業規則」を見直す機会になるかもしれません。今後、新型コロナウイルス感染症の再流行等により学校の休校、幼稚園や保育園が休園となったとします。核家族で共働きの世帯では、やはり子どもたちの対応をすることは難しくなります。そこで、曜日ごとに、「今日は父親が子どもの対応をする日なので、昼間に仕事をするのではなく、母親の仕事が終わる夕方以降に、仕事をすることができる」、「今日は母親が子どもの対応をする日なので、父親の仕事が終わる夕方以降に、仕事をすることができる」というような家庭内分担を可能にすることが必要です。
このような裁量的労働時間設定を、「就業規則」や「雇用契約」で認めことで、柔軟に就業時間を設定することができるようになれば、「ワークライフバランス」の推進も大きく前進することでしょう。そして、このことは、「移動」という概念からの解放に加え、「固定的な就業時間」という概念からも解放されることを意味し、実は、地方創生を大きく推進することにも貢献します。
(執筆:矢尾板俊平)