大阪都構想と公共選択論(下)
大阪都構想は、大阪市と大阪府の二重行政を解消するために、大阪市を廃止して四つの特別区にし、東京のような都区制度をつくるというものです。現在大阪市にある24の行政区の区長は大阪市長が任命する大阪市職員です。大阪都(法律の関係で名称は大阪府のままとされています)のもとでの特別区区長は選挙で選ばれますし、区議会もできます。住民自治が進むでしょう。現在大阪市が行っている消防や都市計画といった本来都道府県が担う権限は、大阪都にうつります。府と市で別々に行われている水道事業も統一されるでしょう。大阪府には現在33市9町1村の自治体がありますが、これが4区32市9町1村となり、自治体の数も増えます。ただ、4区には都区財政調整制度が残り、この4区は大阪都の中では別格の扱いとなります。他の市町村にはない区への大阪都政府の裁量も残るのです。
大阪都構想は公共選択論からはどのように評価されるでしょうか。第1に、大阪市を廃止し四つの特別区にすることは、Wagner and Yokoyama (2014)にある単中心主義から多中心主義への移行とみることができ、望ましい。大阪市を民主的な四つの特別区にする大阪都構想は競争的連邦主義を促進するでしょう。
第2に、大阪府による大阪市の吸収合併となる大阪都構想は、Migué (1997)が指摘する外部性の問題の内部化とみることができ、望ましい。Miguéは上位政府と下位政府が政治競争をすることによって共有地の悲劇が起こることを指摘しました。これは大阪市と大阪府の二重行政をうまく表現しているように思います。意思決定主体を一つにすることによって、この悲劇を回避できます。
第3に、大阪都全体で見れば、4区に都区財政調整制度を残すのは、多中心主義の観点から望ましくない。Wagner and Yokoyama (2014)の競争的連邦主義は、政府の数を増やすことだけでなく、構成下位政府間の対等な関係を重視します。都区財政調整制度を持つ4区と持たない32市9町1村は、対等でなくなります。他の市町村におろしているが旧大阪市地域だけおろすことができない都道府県業務があるのでしょうか。引き続き考えていきたいと思います。
(執筆:奥井克美)