大阪都構想は望ましいのか
大阪都構想は大阪市を廃止し4つの特別区にするというもので、東京の都区制度を目指す面を持っています。しかし、栗原 (2012)は、都区制度が地方自治の失敗であるといいます。今回は、この観点からの大阪都構想反対論をみていきます。
日本の地方自治制度は、基礎自治体である市町村と広域自治体である都道府県の二層制をとっています。しかし、大都市に関しては、これとは別に二つの特別の制度が存在しています。一つは政令指定都市制度で、もう一つが都区制度です。政令指定都市制度は、市に大きな権限を与え、広域自治体が持っているそれを一部担わせます。一方、都区制度は、広域自治体に大きな権限を与えるもので、東京都だけがこれを採用しています。東京都は府県の権限に加えて、基礎自治体としての権限も持っています。東京都は23区の存在しない地域では広域自治体としての性格を持ち、23区が存在する地域では基礎自治体としての性格を持っているのです。
大阪都構想は、政令指定都市制度から都区制度への変更ととらえることができます。しかし、栗原 (2012) は、これを区から市へという戦後目指された「東京都区制度改革」と逆行するものである、と批判します。東京都ができたのは戦時下の1943年で、首都防衛の意味もありました。東京市と東京府が廃止となり、従来の東京府の区域に東京市と東京府を合体させた新しい団体である東京都が誕生しました。1974年に地方自治法が改正され区長公選制が再導入され、特別区の自治権の拡充がなされました。さらに2000年の地方自治法の改正によって、東京都の特別区は基礎自治体となりました。戦時下でできた統制色の強い制度を、住民の意向を反映させるそれへと制度変更してきました。
栗原 (2012) はしかし、これではまだ足りない。東京都に残っている基礎自治体の権限をすべて特別区にうつし、都区財政調整制度も廃止すべきである、といいます。東京の特別区である23区は、市を目指す方向で改革を進めていくべきにもかかわらず、大阪都構想はこれと逆行する動きで後退である、というのです。考えなければならない論点であると思います。
(注)栗原 (2012)は、栗原利美著・米倉克良編 (2012)『東京都区制度の歴史と課題:都区制度問題の考え方』公人の友社, です。
同じ主張は、川上哲 (2019)「東京都区制度の現状と課題から何を汲み取るか:大阪都構想による住民自治の後退」『住民と自治』2019年12月号, pp. 24-27, にもみられます。
(執筆:奥井克美)