政策の外部性をどう解決するか
ある国や地方政府で実施される公共政策は、一部の国民や住民にマイナスの影響を及ぼしたり、他の公共政策にプラスやマイナスの影響を及ぼしたり、他の国や地方政府にプラスやマイナスの影響を及ぼしたり、いまは生まれていない将来世代にプラスやマイナスの影響を及ぼしたりします。こうした影響が、「政策の外部性」です。
一部の国民や住民にマイナスの影響を及ぼす場合は、「1人1票と1円1票」(No.7)で述べたことの応用問題になります。また、ある公共政策が他の公共政策にプラスやマイナスの影響を及ぼすのは、政策間に補完関係や競合関係があるか、2つの政策課題をもたらす諸要因に共通項や何らかの関係性があるかです。そして、他の国や地方政府あるいは将来世代にプラスやマイナスの影響を及ぼしたりする公共政策の例としては、地球温暖化対策やエネルギー政策が考えられます。
化石燃料の燃焼による二酸化炭素(CO2)排出は、地球温暖化をもたらし、経済的な損失を発生させる。
この「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の見解を前提にすれば、ある国(地方政府)のCO2排出削減のための地球温暖化対策は、他の国(地方政府)や将来世代にプラスの影響を及ぼします。このプラスの影響には、国と地方政府の相互間の影響もあります。他方、CO2排出増大をもたらすようなエネルギー政策は、マイナスの影響を及ぼします。
地方政府間の政策の外部性(水平的外部性)や、国と国内の地方政府との間の政策の外部性(垂直的外部性)に係る問題については、当事者間交渉による問題解決、中央政府である国の政治による問題解決、裁判所の司法による問題解決が考えられます。これに対して、国家間つまり国際間の政策の外部性に係る問題については、世界政府が存在しないゆえに、2国間なり多国間の当事者間交渉(外交交渉)による問題解決や、国際司法裁判所や他の国際裁判所の司法による問題解決や、経済制裁や軍事行動による力による問題解決があります。
しかし、将来世代への政策の外部性に係る問題については、将来世代との当事者間交渉はできなく、現在世代がどのように解決するのかを確りと考える必要があるのです。
(執筆:横山彰)