“This is America’s day. This is democracy’s day. A day of history and hope. Of renewal and resolve.・・・We have learned again that democracy is precious. Democracy is fragile. And at this hour, my friends, democracy has prevailed.” (注1) 「きょうは米国の日だ。きょうは民主主義の日だ。再生と決意の歴史及び希望の日だ。…我々は改めて民主主義の貴重さを認識した。民主主義はもろいものだ。しかし今この瞬間、民主主義は勝利を収めた。」(注2)
これは、アメリカ合衆国第46代大統領ジョー・バイデンが大統領就任演説(2021年1月20日)で語った一部です。この背景には、1月6日ドナルド・トランプ前大統領の発言をきっかけに発生したアメリカ連邦議会議事堂へのトランプ支持過激派の乱入事件がありました。それ以前から、トランプ前大統領の政権運営のもとで、人種や貧富や信念などによる社会の分断と、報道や選挙などを巡る民主主義の正義への不信感が、アメリカで深まっていました。 民主主義は語る人が違えばその意味内容も異なるといわれますが、多大公約数的な辞書的意味をみれば、「(democracy)語源はギリシア語のdemokratiaで、demos(人民)とkratia(権力)とを結合したもの。権力は人民に由来し、権力を人民が行使するという考えとその政治形態」(広辞苑 第六版)です。また、Oxford English Dictionaryに基づけば、英語のdemocracyの語源を順に遡ると、フランス語のdémocratie、ラテン語のdemocratia、 ギリシャ語のδημοκρατίαで、demos「people」と cratia「power」の合成で、その辞書的意味は「government by the people」となります。(注3) バイデン大統領の就任演説は、こうした辞書的意味や語源的意味だけでなく、民主主義とは何かについて歴史・理論・政策の観点から考える糸口を、私たちに与えてくれています。(注4)
前回(No.186)は、アメリカにおけるCOVID-19の感染者数とオンライン診療の利用状況を概観しました。現在でも感染者が増加しており、12月26日までの累計数、死亡者数がそれぞれ約1,873万人、33万人になっています(注1)。 ワクチンや治療薬の研究・開発が急務とされますが、オンライン診療は、①COVID-19の感染予防・早期検査につなげ、また、②基礎疾患患者の受診機会を確保する上で有用とされます。今回は、カイザー・パーマネンテの事例を取り上げます(注2)。 上記の①について、ウェブサイト(Kp.org)において「COVID-19:Latest updates about the vaccine, testing, how to protect yourself and get care」等のコンテンツが設けられています。加入者は、この中の「Looking for care options? Start with an e-visit or COVID-19 assessment to share your symptoms and get guidance for care」をパーソナル・コンピュータや携帯端末により確認して、「I have a kp.org account」 ⇒ 「Start an e-visit」、「USER ID」、「PASSWORD」の入力後にオンライン診療となります(注3)。 ②については、加入者は専用の「Member’s service」 ⇒ 「Start an e-visit」あるいは「Get care、USER ID」、「PASSWORD」を入力して、オンライン診療を受診します。①と②において、各加入者が最初に接する医師は、健診結果や診療・服薬歴を把握している担当医(主に家庭医等のプライマリケアに従事する医師)になります。 これまでの実績の一例は、次のようになっています。
注1)Centers for Disease Control and Prevention「CDC COVID Data Tracker」https://covid.cdc. gov/covid-data-tracker/#cases_casesper100klast7days(2020年12月26日最終確認)より。アメリカでは、10月末以降、感染者数、死亡者数が急増しており、前回(No.186)の10月21日時点ではそれぞれが約810万人、22万人でしたが、およそ3か月後の12月26日までに前者が1,873万人(1,063万人増)、後者が33万人(11万人増)となっています。 注2)カイザー・パーマネンテは、全米の9地域において医療保険事業を展開する非営利の民間保険団体であり、カリフォルニア州が中心拠点になっています(約1,200万人の加入者の中で、70%が同州の居住者です)。今回は基本的な方法を整理することにして、成果や課題については、詳しい情報が確認できた段階で、別稿において取り上げます。なお、カリフォルニア州は、感染率(人口10万人あたりの陽性者の割合)が高く、感染者数が全米で最多の約200万人となっています。 注3)加入者以外は、I don’t have a kp.org account ⇒ Start a COVID-19 assessmentにアクセスしてオンライン診療の受診となります。この場合には、医師は初診の患者として症状や既往症、治療・服薬歴を聴取・把握する必要があります(これに要する費用の一部は、州政府の負担とされます)。 注4)加入者がオンライン診療を受診する際には、原則的に追加負担は発生しません。主な理由は、カイザー・パーマネンテの医療保険事業の基本目的が「重症化・長期入院の抑制」(広くは予防医療の重視)にあり、オンライン診療はこのための方法の一つと考えられていることにあります。