行政事業レビューとEBPM(下)
国では、EBPM推進とあわせて、「統計改革」が推進されています。それと関連して、行政事業レビューでは、事業の成果目標およびその根拠である統計等データを明確にすることが求められています。しかし事業によっては、定量的な成果目標を示すことが困難な場合もあり、代わりに事業の妥当性を検証できる定量データが示されることもあります。
さらに、成果目標を実現するための活動指標も示されます。成果と活動の区別は非常に重要で、活動指標が成果目標とされていないことを検証する必要があります。また、成果や活動に関する定量的評価にあたり、既存の統計データだけでは十分でなく、しばしば独自の集計作業をともないます。
このようなデータとあわせて、ロジックモデルが利用されます。ロジックモデルにおいて示される因果関係は、統計学的手法にもとづくわけではないので、科学的検証にたえるものではありませんが、一定以上の意義はあると思います。まず、事業によっては成果目標を示す適切なデータが存在しないこともあり、そのようなケースにおいて無理に統計学的手法を用いることは的確でないと思います。また、ロジックモデルにより、政策担当者の考えが可視化され、彼らが見落としている事項、たとえば質的要因や外的要因などを指摘しやすくなるという効用があります。これにより、よりスムーズに事業の改善を提言することが可能となります。
行政事業レビューに関して、EBPMの推進と関連付けて、データや因果関係の検証に関する現状について言及してきましたが、これら以外にも、行政評価との連携など、さまざまな課題があります。このようなに課題が多くある行政事業レビューですが、一定以上の意義があります。それは、単に政府予算の無駄の削減や事業実施の改善だけではなく、そもそも、国の行政機関が、国民に対して、事業実施に関する説明責任を果たす一つの取組であるということを認識しておくべきだと思います。
参考文献
伊藤公一朗著『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』光文社新書
エステル・デュフロ他著『政策評価のための因果関係の見つけ方』日本評論社
(執筆:飯島大邦)