国民一人あたり年間所得と国民の幸せ
こんにちは、ふたたび池上です。前回(No.4)は、先進国と開発途上国を区別するのに国民一人あたり年間所得が用いられているというお話でした。今回は、経済学者は国民一人あたり年間所得を重要視しているようだが、国民一人あたり年間所得は、国民の幸せと本当に関係があるのか、というお話です。
まず、貧困者が少ない国ほど幸せな国だという主張に異論がある人はあまりいないと思います。ここで、貧困者の定義を世界銀行の定義にならい、一日あたりの所得が1.90ドル以下の人だと定義します。この1.90ドルは、各国の物価の違いを調整した後の1.90ドルです。1.90ドルは、円に換算すると195円です(2019年5月19日現在で入手可能な最新の世界銀行による各国の物価の違いを調整した為替レート2017年1ドル102.47円)。1日195円でどうやって生活するのか疑問に思う人は多いと思いますが、その話は将来にとっておこうと思います。国民のうち、貧困者の占める比率を、貧困者率と呼びます。国民一人あたり年間所得が小さい国ほど、貧困者率が大きいこと、関係が強いことがわかっています。2つの指標の間の関係が強いことを、相関が大きいと呼びます。
貧困者率も国民一人あたり年間所得もどちらも所得に基づいているのだから相関が大きくて当然という反論を持つ人もいるでしょう。では、所得以外に国民の幸せを示す指標として何が考えられるでしょうか?まず、思い浮かぶのは健康でしょうか?国民一人あたり年間所得が小さい国ほど、乳幼児死亡率が大きく、平均余命が小さいこともわかっています。ただ、これらの健康の指標は、貧困者率ほど、国民一人あたり年間所得との相関は大きくありません。
上記の所得や健康の指標は客観的な指標ですが、国民の幸せの指標として、国民の生活満足度という主観的な指標を取ることもできます。ここでも、国民一人あたり年間所得と国民の生活満足度の間に相関があることがわかっています。日本は労働時間が長すぎる人の数が多そう、自殺率が高そう、など、他の国民の幸せの指標が気になる人もいるかも知れません。それらについては、興味に応じて各自で調べてもらうことにして、次回は、国民一人あたり所得の増加の仕組みのお話にする予定です。
(執筆:池上宗信)