日々是総合政策No.224

スウェーデンのSKVの活動(1)

 スウェーデンのSkatteverket(課税庁、以下SKVと記す)の活動を紹介します(注1)。SKVは、日本における国税庁と税務署を併せたような公的組織で、徴税が業務の基本です。しかし、その業務は日本の国税庁より広範囲に及びます。
 まずSKVは、住民登録業務の責任を負っています。住民は転居や子どもが生まれた場合には、市役所ではなくSKVに届け出なければなりません。
 重要なのはSKVが、住民登録の際に納税者番号、すなわち、個人番号(Personal Identity Nummmer:以下PINと記す)を決め交付することです。新生児は誕生時、移民は移住時の住民登録の際に決定されます。日本のマイナンバーと同様に12桁の数字ですが、PINは乱数字を活用しつつ生年月日(8桁)を組み込み、かつ、性別がただちに判明するよう工夫されています(注2)。この措置は税制・年金・医療などの実務を円滑にし、年齢別・男女別データの作成を容易にすることでしょう。ちなみに、同国の統計では男女別比較がきわめて重視されます。
 さらにSKVは、住民登録で得た情報-本人氏名・住所・生年月日・生誕地・家族の氏名など-とPINを、他の公共機関に自動的に配布する権利を持ちます。配布先公共機関は、①社会保険庁 ②移民局、③国家地図・地籍局、④交通局(運転免許証関連も含む)⑤年金局⑥コンミューン(市町村に該当)⑦ランスティング(都道府県に該当)などです。
 特に、⑥や⑦には情報が毎週送られます。この点、スウェーデンが地方分権の国であることに注意しましょう。コミューンは介護・福祉・教育を、ランスティングは医療を担い、両者とも、その主要財源である地方勤労所得税の税率決定権を持っています (注3)。
 筆者も、ストックフォルムに2年滞在したおり住民登録をしました。驚いたことに、その数日後、妻宛てに「乳がん検診をするように」との案内が届きました。SKVが担っている納税者番号制度は、徴税のみならず、社会保障の迅速な実施のためにも使用されているのです。

(注)
1.本稿は、馬場義久[2021]『スウェーデンの租税政策』早大出版部、243-247頁の要点を平易に解説したものである。
2.なお、性転換するとPINを変更しなければなりません。
3.つまり、ランスティングとコミューンの関係は、公共支出の役割分担に基づく「水平的関係」と言えます。

(執筆:馬場 義久)

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