ユーザー視点の行政デジタル革命
いま、皆さんの身近な社会やコミュニティで、皆さん自身が何らかの政策づくりに関わることになったと思います。その時、皆さんは、どのような視点で政策を考えますか。この問いに対して、「自分が良いと思う政策を考える」と答える方もいらっしゃるかもしれません。または、「みんなが良いと思う政策を考える」と答える方もいらっしゃるかもしれません。答えは、どれも正しいと思いますが、皆さんの中で「ユーザー(利用者)の視点で考える」と思った方はいらっしゃいますか。
例えば、このようなことを考えてみてください。いま、あなたは「住民票」が必要になったとします。そこで、市役所の窓口に行きました。そこには、案内係の人がいて、番号札を渡してくれて、申請書の書き方を親切に教えてくれました。ただ、番号札を見てみると、自分の前に10人ほど待っていることもわかりました。
このとき、皆さんはどのように思うでしょうか。5分待っても呼び出されず、10分待っても、まだ自分の前に、あと数人。「今日は、この後、用事があるのに」、「もっと早く手続きが済めばいいのに」。このとき、ユーザー視点で考えれば、皆さんが最も求めるサービスは、早く住民票を発行してもらうこと、すなわち「時間」だったかもしれません。
ユーザー視点で考えれば、行政サービスの提供において、「時間」はとても重要な要素だと思います。利用者満足度の観点から「どれだけ時間がかかったか」ということ、時間というコストをかけてしまったかということに、もっと注目していくべきだと思います。
そこで必要なことは何か。これが行政のデジタル化(DX:デジタルトランスフォーメーション)です。AI、IoT等のデジタル技術を導入し、業務の効率化や業務改善を進めることは、住民が負担する「時間」というコストを軽減することにつながります。
「脱ハンコ」は、行政のデジタル化の大きな象徴だと思います。しかし、行政のデジタル化は印鑑を無くすことではありません。行政サービスの利便性を高め、住民が支払った時間のコストを戻すことなのです。「行政のデジタル革命を政策ユーザーの視点で」。この視点が欠かせません。
(執筆:矢尾板俊平)