テレワークは主流になれるか?(2)
20~30年前の過去と現在におけるテレワークの相違・類似点を整理してみると、
1.通信回線の速度・反応が速くなった(混雑による低速状況は残る)。
2.通信障害・不具合の発生が減少した。
3.常時使用の通信機器、つまり使い慣れた端末が存在する(スマホ、PC)。
4.オンライン・ミーティング用アプリケーションやSNSの進歩により、顔を見ながら話をすることが可能となった。
5.face-to-face communicationの効果は少しあるが、十分ではない。
6.個人に明確に割り当てられた(指定、指示された)仕事や作業については評価が可能でも、そうでない仕事については評価が困難で、適正報酬の確定が難しい。
7.テレワークでも、ときどき事務所・事業所にでかけるニーズは消えていない。
上記のうち1~4は明らかな改善であるが、厄介な問題を含んでいる。また、5~7は完全に解決されていない問題である。以下では、1~4の問題について取り上げる。ここでは、自宅のパソコンで作業を行い、ときどき通信回線を使ってデータの送受信を行ったり、自宅からオンライン会議に参加するような仕事を想定しよう。この事例では、スマホしか使えない人は除外される。
こうしたテレワーク(在宅勤務)が可能であるためには、高速・安定・廉価な通信回線(CT)の利用と情報機器・端末(IT)の常時利用が前提条件となる。現在は、こうした条件が一般に整備されていると思われるが、それだけでは解決にならない。セキュリティとコスト負担の問題がある。
第1は、パソコンやデータを社外に持ち出せるかというセキュリティの問題だ。ファイアウォールやセキュリティ・システムで守られた社内環境とは異なる自宅環境では、パソコンやデータの紛失・窃盗・漏洩が生じる可能性がある。第2に、パソコンや通信の知識を十分に持たない素人が自宅で作業を行うと、マルウェアやコンピュータウイルスに触れる可能性が高く、セキュリティ問題を深刻化させる。第3に、通信回線、ハードウェア、ソフトウェアや周辺機器の費用(印刷コスト含む)は誰が負担するのか。仕事用パソコンと個人用パソコンの使い分けがなされない場合はどうなるか。新たな機器の導入・設置やバージョンアップの作業・費用負担は誰が行うのか。
(執筆:谷口洋志)