日々是総合政策No.165

国公法の定年延長規定の適用範囲への疑問(下)

No.160(国公法の定年延長規定の適用範囲への疑問(上))からつづき

 なお、政府解釈は、別段の定年の定めのあるものにも、第81条の3の規定の適用ができるということであろう。であれば、国家公務員法の例外としての別の定年規定の定めがある国家公務員は他にもある。
 これらに適用可能と考えているのかどうかもはっきりさせて欲しいところだ。当然、これらについても、解釈変更に当たっては、検討がなされているはずだからだ。憲法は、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」(第41条)と定めるが、解釈変更による実質的な立法権の行使が行われることのないよう、法の解釈つまり、法の適用の外縁は、はっきりさせておくべきだ。
 最高裁の裁判官(70歳)裁判官(65歳)、会計検査官(70歳)、公正取引委員会の委員長や委員(70歳)である。これらは、全て、内閣任命で天皇の認証を要する認証官である点も検事長と同じ、国家公務員といえば国家公務員というのも同じである。ただ、裁判官と会計検査官は、国家公務員であっても一般職ではなく、特別職であるという点、会計検査官、公正取引委員会の委員長や委員は、任命に国会の同意を要する点が異なっている。第81条の3 の字面を読む限り 特別職か、一般職か、あるいは国会同意の有無で区別されるようにはみえない。「検察官」の定年を、 解釈変更で 閣議決定で定年延長できるのなら、最高裁判所の裁判官も、閣議決定で定年延長できるという解釈も可能ではないだろうか、というのは、単なる私の杞憂だろうか。
 これらの点、国会質疑等で、政府見解を質して欲しいと考えるのは、私だけなのだろうか。「法治国家」で、「人事権を背景とした「人治」がまかり通るようなことがあってはならない、そのためには、人事権を行使できる範囲は明確にしておくことが重要である。法の解釈」つまり、法の適用の外縁は、解釈変更による実質的な立法権の行使が行われないよう、はっきりさせておくべきではないだろうか。また、別法ではないが、人事院規則で定年が62歳と決められている内閣法制次長の定年を延長した例もあるからだ。

(執筆:平嶋彰英)

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