日々是総合政策No.164

ソーシャルビジネスとしての医療・介護

 新型コロナウイルスの猛威に苦悩する医療・介護問題を、ソーシャルビジネスの視点から考えてみましょう。ソーシャルビジネスとは、医療・介護、教育、環境整備のように、社会的な課題を営利事業を通じて解決する事業のことです。
 これまでも、非営利型の事業として、営利型の中小企業・小規模事業、ベンチャー企業とともに地域を基盤とする事業を行ってきました。活動資金は、スタート当初は寄付・会費、補助金・助成金それに自己資金が主でした。しかし、次第に組織を存続するだけの収益を自ら獲得、またそれを超えて事業規模が拡大するようになると、銀行借入だけでなく地方自治体が仲介する住民公募地方債、NPO・NPOバンクが仲介するコミュニティファンド、さらにクラウドファンディングを通じて、事業に共感する市民から直接的に資金を得るようになっています。 
 このボトムアップ型の流れの中で、政府は第2次補正予算において企業の雇用・資金繰りと医療体制の強化に重点を置いています。実際、地域経済活性化を兼ねた新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金が準備されています。ところが、ウイルス検査体制、ワクチン開発・治療が遅れているだけでなく、医療・介護関係の人材不足や経営悪化が深刻になっています。  
 そこで、地域の実情を重視する政府と自治体の支援が急がれることになります。まず、感染防止・治療そして事業協力者への補償のために、補正予算・予備費10兆円のうちかなりの資金を当てることになりそうです。しかし、成功の鍵を握るのは、政府省庁間の調整および自治体、研究機関、金融機関・企業、市民との効率的な協業です。
 次いで、今後、医療法人(病院、診療所、介護老人保健施設)が生み出す剰余金の配当を許可するなど「医療法」の規制を緩めることで、コストを低め収益の拡大を目指そうとする医療法人の経営努力を支援する必要があるのではないでしょうか。この過程で、医療のICT化(遠隔診療 キャッシュレス化 電子カルテ)が進み、市民はより有利な条件でサービスを受けられることになるはずです。また、海外からの医療ツーリズムにもつながるように思われます。 

(執筆:岸真清)

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