テレワークは主流になれるか?(1)
新型コロナウイルス感染症問題への不安から、自宅もしくは自宅近くの駅周辺の場所を借りて仕事をするテレワークをすべきだという議論がある。テレワークは、今後の働き方として果たして主流となりうるか。
一般社団法人日本テレワーク協会の説明によれば、テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語であり、働く場所によって、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つに分けられる(https://www.japan-telework.or.jp/intro/tw_about.html)。このうち、モバイルワークは、顧客先や移動中でのPC・携帯使用を意味する用語であり、特定の場所での働き方ではないので、以下では、自宅もしくは自宅近くの場所(サテライトオフィス)で働くテレワークについて考える。
今から20年以上前に、サテライトオフィスの調査をしたことがある。埼玉県大宮駅西口の超高層ビルに入居していた会社を訪問したのだが、話を聞いてがっかりした。高額・高コストな通信機器・端末(当時最先端の電子黒板もあった)が設置されていたにもかかわらず、ほとんど使っていないという話だった。
使わない理由はいくつかあった。例えば、(1)当時の通信回線の速度・反応が遅い(伝送遅延)、(2)会議をした時にはいつも通信障害や不具合が生じる、(3)たまにしか使わないので通信機器の使用に慣れない(一種のデジタル・デバイド)、(4)声だけで相手の顔が見えず、いつ大事な話になるかを緊張しながら聞くために終わった後に強い疲労感が残る、など。
別の訪問場所では、サテライトオフィスで働くことに強い不安があるということも聞いた。(5)同じ部署の人間同士での会話がなく、雑談からのひらめきや話題の発展といった展開がない(face-to-face communicationの効果得られず)、(6)通信手段を通じて仕事のやり取りするだけで、自分の仕事がどのように評価されているのか不安に感じる、(7)ひと月のうち何度かは都心に行く必要があり、結局は勤務場所が2か所に分散され、継続的な作業ができない、など。
現在の状況下で、これらの問題は解決済みなのだろうか。(2)以降で考えてみたい。
(執筆:谷口洋志)