コロナ後の世界(2) 「移動」からの解放
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響は、私たちの「働き方」にも大きな影響を与えました。そのひとつが「リモートワーク」や「テレワーク」です。ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用することで、特定の「場所」に行かなくても、物理的な制約を受けずに、協働作業ができる可能性を認識することができました。もちろん、これまでと違った不便さもあったと思いますし、「課題」が無いかといえば、もちろん多くの課題はあります。
「会議」は、そのひとつでしょう。何かを話し合うとき、何かを決めるとき、皆が同じ場に集い、顔を見合わせながら、議論を尽くす。しかし、ICTを活用すれば、同じ場所に集まらなくても、顔を合わせて、議論することができることを体験し、この2か月の間で、少しずつ慣れ、それも日常生活のひとつの「当たり前」になっていく感触があります。会議のときに、資料を印刷しなければ、お弁当を用意しなければ、お茶を用意しなければ、と気になりますが、オンライン会議であれば、全て自前で準備ですので、気が楽です。
今年の流行語になるかどうかはわかりませんが、「Zoom飲み会」という言葉も耳にしました。家にいながらにして、食べ物や飲み物を自分で用意して、オンラインで友人や知人と楽しく交流することができる。あたかも、目の前に、友人や知人がいるような感覚で楽しめる。問題は、お店なら「ラストオーダー」があったり、「終電」があったりして、終了時刻を気にしますが、「オンライン飲み会」は、「ラストオーダー」も無ければ、家にいるので「終電」を気にする必要は無く、ついつい、長時間になってしまう、ということのようです。
ICTは、私たちを「移動」の概念からの解放に導いてくれるかもしれません。「移動」は「時間」を伴います。私たちは、そうした「機会費用」を少なからず支払ってきました。ICTにより、その「時間」を節約することができれば、その時間を別のことのために使うことができるようになります。ある人は家族との時間のために、ある人は自分の趣味や勉強のために使うかもしれません。今回の経験は、人々のライフスタイルを大きく変容させる「希望」を感じさせてくれたとも言えます。
(執筆:矢尾板俊平)