スウェーデンの地方税(12)-歳入の十分性⑤補助金の役割(ⅰ)
前回、地方支出に占める税の割合の市間分布を示しました(本コラムNo.301を参照)。政府はその市間格差対策として歳入均等化補助金(以下、補助金)を採用しています。その仕組みを紹介します(詳しくは注1を参照)。
補助金は一人当り税収ではなく、一人当り課税勤労所得(以下、A)をもとに算出されます。この点が重要です。
(1)市や県が補助金を得る場合
ある市(県)のA<市(県)のAの全国平均×1.15 ① であると補助金を得、
補助金額=(①の右辺-左辺)×2003年の市(県)の税率の全国平均×0.95(県は0.9)。
(2)市や県が負担金を払う場合(負の補助金)
ある市(県)のA>市(県)のAの全国平均×1.15 ② であると負担金を払い
負担金額=(②の左辺-右辺)×2003年の市(県)の税率の全国平均×0.85(県も0.85)。
国は(2)からの負担金収入に国税を加え(1)の補助金を交付します。2021年には、290市(21県)のうち277市(20県)が補助金を得、13市(1県)が負担金を払いました(注2より)。
表:補助金の歳入均等化効果 2021年
(注記)税率以外の単位はクローナ。
(出所)注2に基づき筆者算出。
表は、一人当り税収が全市で最小のEda市と最大のDanderyd市を例に、補助金の効果を示します。分析単位が市なので、県の補助金も県に属する各市への補助金と考え、
ある市の一人当り県補助金=(県補助金総額×市人口/県人口)÷市人口
と想定します。
Edaの税収はDanderydの42.2%(55200÷130800)ですが、全収入(税+補助金)では77.3%(78911÷102088)に増加します。
仮にこの全収入を税のみで調達する場合、Edaの税率は48.1%(=78911÷163900)、Danderydの税率は24%(=102088÷424700)となります。前者は税率を14.4%だけ引上げなければならず、後者は6.8%引下げることができます。Edaの税率48.1%は重い負担で、実施不可能です。補助金が二市間の税率格差を緩和していると言えましょう。
注
1.Regeringens skrivelse(2019),Skr.2019/20:77,Bilaga,p.15.
2.SCB URL
www.statistikdatabasen.scb.se/pxweb/sv/ssd/
2024年10月23日参照。
(執筆:馬場 義久)