デフレについて考える (1)
経済学では、デフレーション、略してデフレは、物価水準が継続的に下落することを言います。反対に、物価水準が継続的に上昇する場合をインフレーション、略してインフレと言います。
日本では、ときどき、1990年代半ばからずっとデフレが続いていると言われます。しかし、厳密にいえば、これは事実ではありません。これについて考える前に、幾つかの確認から始めましょう。(細部についての細かい議論は省略します。)
第1に、物価水準とは、さまざまな財貨・サービスの価格を総合したもの、であることに注意してください。というのは、ある財貨・サービスが値下がりし、ある財貨・サービスが値上がりすることはいつも生じており、結果としてこれを総合した価格水準、つまり物価水準は上昇することもあれば下落することもあるからです。
第2に、物価水準には異なる種類があることを確認しましょう。消費者が日頃購入する財貨・サービスの総合価格(物価)を消費者物価、そして、ある基準年の水準を100として他の年・月の消費者物価水準を表したものを消費者物価指数(CPI、Consumer Price Indexの略)と言います。2022年9月現在、基準年は2020年です。統計は、総務省統計局が作成し、公表しています。
購入・支出する財貨・サービスのすべてがCPIに含まれるわけではありません。たとえば、税金・社会保険料(医療・年金保険料など)や土地・家屋の購入といった支出はCPIに含まれませんが、個人が所有する住宅(持家)については帰属家賃としてCPIに含めています。帰属家賃を計算に入れるのは、借家だけを計算に含めて持家を除いた場合の影響を取り除くためです。
以下では、CPIを念頭に、デフレの問題を考えることにします。
なお、企業同士が取引する財貨(サービスを含みません)の物価指数は、企業物価指数(CGPI、Corporate Goods Price Indexの略と呼ばれます。CGPIは、国内外別に、国内企業物価指数と輸出・輸入物価指数から構成されます。2022年9月現在、基準年は2020年です。統計は、日本銀行(調査統計局物価統計課)が作成し、公表しています(注)。
(注)CPIとCGPIの詳細やデータについては、総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」(https://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm)、および日本銀行「物価関連統計」(https://www.boj.or.jp/statistics/pi/index.htm/)をご覧ください。いずれも2022年9月5日アクセス。
(執筆:谷口洋志)