日本の税と可処分所得(6)-個人住民税について
今回は、勤め先収入の増加額に占める個人住民税(以下、住民税)の増加額の割合(本コラムNo.313を参照)、について考えます。増加額とは2023年の値マイナス2003年の値のことです。
表 勤め先収入の増加額と税の増加額の比較 2003-2023年(円/月,%)

(注記) 1.収入(勤め先収入)・所得税・住民税は月額。
2.住民税/収入は、勤め先収入の増加額に占める住民税の増加額の割合(%)。所得税も同様
(出所)注1に基づき筆者算出。
表は、勤め先収入の増加額と税の増加額を勤め先収入(以下、収入)の10階層について示します。また、住民税/収入は、住民税の増加額の割合(住民税増加額÷収入増加額 %)です。参考のため、所得税(国の勤労所得税)も取りあげました。
各階層の収入の増加額は、基本的に労働市場で決定されます。最高値は第10階層の177611円(月額)で、最低値である第2階層の15053円の約11.8倍です。
他方、住民税の増加額は、最高値の第10階層は最低値の第1階層の4.1倍(13182÷3205)です。収入の増加額に比べると、住民税の増加額はより均一な分布です。
その一因として、2007年から実施された、所得税から住民税への税源移譲に基づく住民税率の均一化が考えられます。
2006年以前は、課税所得が200万円未満では税率5%、200万円以上700万円未満は税率10%、700万円以上は税率13%という超過累進税率構造でしたが、2007年以降は各課税所得に対し均一の税率10%が採用されました。つまり、課税所得200万円未満の住民は税率引上げ、200万円超では税率引下げとなりました(税源移譲全般についての明快な説明は注2を参照)。
この改革により、住民税増加額はより均一な分布となります。2023年には、課税所得200万円以下の階層は、2003年に比べ高い税率に直面し、逆に、課税所得200万円より高い階層は、2003年に比べ低い税率に直面するからです。
以上の点もあり、住民税/収入は、第2階層で28%、第1階層で18%、第10階層で7%となりました。両年とも超過累進税率構造であった、所得税/収入と対照的ですね。
注
1.e-Stat URL
家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
最終アクセス 2025年9月9日。
2.横山・馬場・堀場『現代財政学』有斐閣、303-307頁。
(執筆 馬場 義久)