何のために働くか?
人は、何のために仕事をするのでしょうか?もうすぐ卒業を迎える学生に質問すると、食べていくため(生活費を稼ぐため)、趣味に使うお金を稼ぐため、親から経済的に独立するため、周りの人も皆卒業すると働くから、などの答えが返ってきます。
マサチューセッツ工科大学のエドガー・シャインは、経営大学院の修士課程の2年生にアンケートをし、卒業後にもフォローアップインタビューをしたデータから、個人がキャリアを選択するときの軸となる価値観や欲求を8つに分類し、キャリア・アンカー(アンカーは錨)と名付けました。アンカーとは、人は自分に適していない仕事に就いたときに何かに引き戻されるイメージを持つ、という例えで、専門・職能別能力、経営管理能力、自立・独立、保障・安定、起業家的創造性、奉仕・社会貢献、純粋な挑戦、生活様式の分類の中に、誰もがどうしてもあきらめたくない領域を持っている、という考え方です。何が自分の重要なアンカーであるかを知ることができれば、自分らしい職業選択をできることになります。
学校を卒業して勤め人として給料をもらうと、そこから所得税や住民税などの税金を納めるようになります。企業も個人と同じように企業所得から税金を納めています。しかしながら、毎年のように決算数値をごまかす粉飾や脱税のニュースを耳にします。
ではなぜ、粉飾や脱税は起こるのでしょうか?税金は、ごまかせるなら払いたくないお金なのでしょうか?
私たちは、税金を財源として公共サービスを受けています。納税は憲法上の3大義務の一つです。教育と勤労は権利とも書かれていますが、納税だけは権利と書かれていません。所得に見合った納税をするのはもちろんですが、平均額より多くの納税が出来たら、それは誇りと考えてもよいかもしれません。だからこそ、税金の使途にも注意を払っていく必要があります。公共サービスをたくさん受けられる方がいいか(大きな政府)、最低限で良いか(小さな政府)という視点も重要です。働くということは、自己実現と社会構成員としての責任を果たす両面を持っています。
さて、みなさんは、何のために働きますか?
参考:エドガーH.シャイン著、金井壽宏訳『キャリア・アンカー―自分の本当の価値を発見しよう―』白桃書房、2003
(執筆:渡部美紀子)