研究プロジェクト 2019-5

【研究プロジェクト・テーマ】

和文:民主主義デザインと公共選択:こども・若者の政治参画・社会参画
英文:Democracy design and Public Choice:Political Participation by Future Generation

【プロジェクト・リーダー】

矢尾板俊平(淑徳大学コミュニティ政策学部教授、一般社団法人総合政策フォーラム理事)

【研究プロジェクトの趣旨】

 本プロジェクトの目的は、「世代間の利害対立」の問題と「若者の投票率」や「若者の社会参画」の問題に注目し、民主主義の仕組みの中で、こどもや若者などの「将来世代」の意見を、「現在」の政策決定に反映させていくことができるか、ということを検討することである。
 例えば、財政問題を考えてみよう。現役世代において「財政赤字」を埋め合わせるために公債を発行する。これを負担するのは将来世代である。このとき、将来世代も受益を享受できるのであれば良いが、受益を享受できるのは現役世代だけで、将来世代に残るのは負担だけであるのであれば、将来世代は、この政策決定を容認しないだろう。しかしながら、現在の政策決定に、将来世代は参加することができないため、決定を一方的に受け入れざるを得ない。さらに、現役世代が将来世代の利害を考慮し、政策決定を行うかどうかという問題を考えると、それが合理的でなければ、現役世代は将来世代を配慮するような行動をするとは考えにくい。むしろ、民主主義における選挙では、長期的な利益よりも短期的な利益が優先されやすい。
 このような問題は、財政問題だけに限らず、まちづくり、都市計画、社会保障、環境やエネルギーの問題など、あらゆる政策課題において課題となる。
 また、選挙が行われるたびに、若者の投票率の低さが指摘される。企画者が過去に行った若者向けのアンケート調査からは、投票に行かない理由として、「自分が一票を投じたところで選挙結果に影響を与えないから」が多く選択された。これは、投票行動と自身の社会的影響力の認知とが関係していることを示唆する内容である。この点は、前段の「世代間の利害対立」の問題とも関わる問題であると考えられる。つまり、こどもや若者は、現在の政策決定に関与することが難しい。そのため、自分たちの意思が現在の政策決定に影響を及ぼせないし、本来は及ぼすことができたとしても、それを実感することは難しい。そこで、投票には行かず、益々、自分たち自身の影響力を低下させてしまう。このような悪循環が生じているのではないかと考えられる。
 そこで、本プロジェクトでは、企画者が取り組んでいる「千葉市こども若者市役所」の取り組みや「ちばでもプロジェクト」の取り組みを事例にしながら、こどもや若者の意見を現在の政策決定に反映させるための仕組みを検討するとともに、こどもや若者への教育活動、こども若者の社会参画の促進のためのプロジェクトを実施する。また有権者の投票行動や政治参画行動、政治家や行政の情報公開の仕組みの在り方を考え、民主主義のデザインを検討していきたい。

【研究プロジェクトの内容】

(1)代表的な先行研究
加藤創太・小林慶一郎編著(2017)『財政と民主主義:ポピュリズムは債務危機への道か』、日本経済新聞出版社。
小林慶一郎(2019)『時間の経済学:自由・正義・歴史の復讐』、ミネルヴァ書房。
西條辰義編著(2015)『フューチャー・デザイン:七世代先を見据えた社会』、勁草書房
矢尾板俊平他(2016)「若年世代の政治意識と参加に関する考察」、『淑徳大学サービスラーニングセンター年報』、第6号、pp.15-2、淑徳大学サービスラーニングセンター、2016年3月。
矢尾板俊平(2017)『地方創生の総合政策論:“DWCM”地域の人々の幸せを高めるための仕組み、ルール、マネジメント』、勁草書房。
矢尾板俊平(2019)「福島原発事故に係る損害賠償責任とその課題」、『公共選択』、第71号、pp.139-157、2019年3月。
(2)研究手法
①「千葉市こども若者市役所」や「ちばでもプロジェクト」等の活動とともに、自治体等とも連携しながら、ワークショップやアンケート調査を通じ、データを収集し、分析を行う。
例:ちばでもプロジェクトでは、選挙期間中に「模擬投票」を行い、実際の選挙結果と模擬投票結果の比較等を行っている。
②小学生、中学生、高校生への教育活動や社会参画活動を通じたアプローチを検討し、デザイン思考の考え方に基づき、実践しながら、社会参画の仕組みを検討していく。

【研究プロジェクト参加の方法】

本研究プロジェクトへの参加を希望される方は、下記フォームにてお申込みください。 

【研究プロジェクトの研究会日程】

 参加メンバーが確定後、メンバーの皆さんに改めてご連絡します。